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第2回全国企業法務シンポジウム

【目次】

1 第2回企業法務シンポジウム

2 テーマについて

3 賃料「減額」請求の成功事例

4 賃料増減額請求と調停

5 借地借家法の適用ある賃貸借か,適用ない出店契約か

 

1 第2回企業法務シンポジウム

平成31年1月11日,東京国際フォーラムにおいて,第2回全国企業法務シンポジウムが開かれました。同弁護士グループの大阪地区担当として,当事務所から代表弁護士が参加しました。

☞ 前回(第一回)の記事はこちら

午後には第6回全国交通事故シンポジウムが開かれました。

 

 テーマについて

各弁護士の発表の項目については,以下のようなものが含まれました。

・地方におけるM&A,DD(デューデリジェンス)

・賃料減額請求の成功事例(地方)・各種の株主間紛争(A弁護士)

・経営権紛争(B弁護士)

・非営利法人における内部紛争(C弁護士)

・情報漏洩関係

・法人破産と税務

・クレーム対応を指導する法人への研修

・行政指導への立会い

・テナント出店と借地借家法

前回(第1回),A弁護士が法人内紛争について発表したことを契機に,今回はA弁護士の続編があり,B弁護士,C弁護士においても,別角度からの発表があり,参加弁護士の間では,企業内紛争事例が比較的多い印象がありました。

 

3 賃料「減額」請求の成功事例

地方の弁護士からですが,賃料「減額」請求の成功事例が発表されたのは新鮮でした。

私の事務所では,多店舗展開をする法人の顧問先が独立時から多かったこともあり,賃貸借関係の事案は多数扱ってきました。

近時の相談としては,「増額」請求したい,「増額」請求された,という事例が多いのです。大阪と地方の差を感じました。

 

4 賃料増減額請求と調停

借地借家法の対象となる賃貸借契約において,賃料増減請求は,交渉がまとまらない場合,いきなり訴訟は出来ず,まず,調停を行う必要があります。

しかし,調停では,「増額」請求はなかなか認められず,減額になる危険性もありますので,簡単ではありません。要件は以下の条文のように,厳しいのです。

借地借家法11条1項前段

地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が,土地に対する租税その他の公課の増減により,土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって地代等の増減を請求することができる。

借地借家法32条1項前段

建物の借地が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

 

結局,相当高額の物件以外の場合,弁護士費用との対比で実益が取りにくいため,交渉ではまとまらない場合,無理に調停まで進めないよう,アドバイスすることが多いです。

もっとも,内容証明程度は送っておいた方が良いとアドバイスするケースは少なくありません。何もせずに更新を繰り返すと,異議なく更新を続けていた,として,①当初契約時から,ではなく,②直近の更新時からのの変化のみ問題とすべきだ,と賃借人が主張されることが少なくないからです。

 

5 借地借家法の適用ある賃貸借か,適用ない出店契約か

 

1 そもそも借地借家法の適用があるか

更に,多店舗展開する企業の各店舗については,前提として,

①借地借家法の適用のある賃貸借契約か

②借地借家法の適用のない出店契約(テナント契約)か

という問題があります。②の出店契約(テナント契約)場合,賃料増減のルールが上記と異なりますし,もっと基本的に,正当事由がなければ家主が契約更新を拒絶できない,等の借家人保護に関する借地借家法の諸規定が適用されません

 

2 両者の区分に関する判例(当事務所の発表)

1 判例の傾向と判断要素

当事務所の弁護士の発表は,両者の区別に関する判例の整理でした。法的効果に大きな差がある割には,区分の限界は微妙です。

区分の判断要素としては

①構造上の独立性・排他性

②使用方法の独立性・排他性,営業の独立性・責任性

の2つを中心に判断されています。

 

①構造上の独立性・排他性

有名な最判平4.2.6は,鉄道高架下の一部を借りて飲食店として利用した事例ですが,高架下の施設を借家法上の建物と認め,ブロックにべニアを張った壁で区分されている飲食店について,独立性・排他性を認め,借家法の適用を認めました。

逆に,販売区画に直ぐに取り外せる間仕切りをした程度では,認められない材料となります。

もっとも,事案によって,境界は相当,微妙になります。

 

②使用方法の独立性・排他性,営業の独立性・責任性

売上金を貸主に収めて,売上連動の歩合賃料を支払っていたり,営業の具体的内容について,貸主が支持するなど,借主に使用方法や営業に関する独立性が乏しい場合,借地借家法の適用がないテナント契約・出店契約と認定される材料になります。

 

2 ルミネ立川店事件の東京地裁判決と批判

下級審の裁判例ですが,東京地判平20.6.30は,8階1区画を賃借して洋食レストランを営業していた事案において,借地借家法の適用を否定しました。

控訴されており,最終結論については不明ですが,上記判決に対しては,判例時報2039号169頁に本田純一中大教授の批判的評釈があります。

何度も更新されていること,家主側が3000万円の立退料を提示した上で原状回復義務を免除していること,など,特殊要因が多い事例ですが,やや他の裁判例の判断と乖離しているように見られ,判例評釈でも上記のとおり,批判的に取り上げられています。

 

文責 弁護士法人 大阪弁護士事務所

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