交通人身事故の主な損害賠償項目
交通人身事故の主な損害賠償項目は、
①治療費、②休業損害、③入通院慰謝料、④後遺障害慰謝料、⑤後遺障害逸失利益です。
①の治療費は病院から明細が出ますので、被害者の方にも金額がわかります。 ②の休業損害のうち、会社を休んだり有休消化をした金額も、休業損害証明書により把握できます。
③の入通院慰謝料、④の後遺障害慰謝料、⑤の後遺障害逸失利益と、②のうち主婦休損は、一般の人には金額が分かりにくく、保険会社は裁判基準(弁護士基準)より大幅に低い金額で示談金を提示します。
また、④⑤の金額は、
後遺障害の等級により大きく変わります。後遺障害の等級認定が非常に重要になります。
※その他に、交通費、文書料、入院雑費、物損分などがあります。重大事故であれば、 付添看護費等が発生します。
※死亡事故では、①死亡慰謝料、②逸失利益、③治療費などが主な項目になります。
弁護士に依頼するメリットの1つは、裁判基準による計算で認定される損害額が大きく増えることです。
1.治療費
治療費については、必要かつ相当な実費が認められます。
症状固定後の治療費は原則として、認められません。ただし、症状の内容程度に照らして必要かつ相当な金額が認められる場合があります。
整骨院、接骨院における治療費については、要注意です。施術費、鍼灸、マッサージ費用、温泉治療等は、医師の指示がある場合や、症状により有効かつ相当な場合には、相当額が認められることがある、とされます。医師の指示は要件ではありませんが、最低でも月1回は医師の診断を受けるよう、指導しています。医師の診察は、整骨院等における治療の相当性の判断上も必要ですが、後遺障害診断書をキチンと書いてもらうためにも必要です。
治療費は金額が明確であり、余り問題になりません。
問題になるのは、保険会社の治療費打ち切りの時期、すなわち、症状固定の時期です。打ち切りに納得できない場合には、弁護士にご相談ください。
2.休業損害
最も多い給与所得者については、勤務先の発行する休業損害証明書により金額は明確です。事故前3か月の平均収入を基礎に、受傷にための休業により現実に喪失した収入額を損害として認めます。
問題は、主婦や、パート等の収入もあるが主婦がメインの方です。裁判基準では、原則として、学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎として、休業損害を計算します。
保険会社は主婦休損を0円で示談提示したり、パートの休業損害分のみ評価して主婦業について評価しない示談提示をする場合が多いので要注意です。
事業所得者は、原則として、事故前年の申告所得額を基礎とします。実際より低い金額で申告している場合でも、実収入額の立証が出来ない限り、実収入額によることはできません。役員では、労務対価部分は認められますが、利益配当部分は認められません。
3.入通院慰謝料
入通院期間(※)に基づき、下記表を基準に算定します。
※例:3~5月の3か月のうち40日通院した場合、入通院期間は92日、実通院日数は40日となります。自賠責や任意保険会社は実通院日数を基準とします。裁判基準は保険基準より相当高額になります。
なお、仕事や家庭の事情で期間が短くなった場合、診療が本人の希望で過剰気味である場合などは調整されます。また、通院が長期、不規則、散発的等の場合には、実通院日数の3.5倍と比較して少ない方の日数を基礎とされる場合があります。
大阪地裁では通常基準と重傷基準がありますが、中間的な金額を用いる場合もあります。なお、軽度の神経症状、例えば、むち打ちで他覚所見がない場合などは、通常の慰謝料の3分の2程度を基準とします。
より長い期間についてはこちら
4.後遺障害慰謝料
原則として、後遺障害の等級に応じて、下記の金額となります。(大阪基準)
最下位である14級(110万円)に至らない場合でも、実際の障害に応じた慰謝料が認められる場合がありますが、示談では困難です。
自賠責や保険会社の基準額より、かなり高額となります。
後遺障害等級の別表1(要介護)の2級と別表2の後遺障害があっても、自賠責保険では等級の繰上げはありませんが、慰謝料の算定においては、等級の繰上げ算定が行われます(赤い本)。この点を失念する弁護士も多いため、注意が必要です。
5.後遺障害逸失利益
基礎収入に後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失割合を掛けて、喪失期間に相当するライプニッツ係数を掛けて算定します
(計算式) 基礎収入×労働能力の喪失率×喪失期間のラ係数 (※)
※未成年者等の未就労は、より複雑な計算になります。
労働能力の喪失率は下記表が基準となります。
労働能力の喪失期間は、症状固定時から67歳までが原則です。ただし、年長者で平均余命の2分の1の期間の方が長い場合はその期間とします。
また、むち打ちの場合、12級程度で5~10年、14級程度で2~5年が基準ですが、実際の訴訟では、14級の場合でもほとんど5年が認められています。
ライプニッツ係数は将来の収入を複利で現在価値に置き換えるための係数です。民法は法定利率5%で計算しますので、5年では4.3295.10年では7.7217と少なくなります。20年では12.4622、30年では15.3725と約半分になってしまいます。この点は不合理であり、改正民法では法定利率の見直しが検討されています。
基礎収入は休業損害の場合と準じた考え方です。無職者は就労の蓋然性があれば認められます。
幼児等、未就労者では、学歴計・全年齢平均賃金を基礎としますが、大学生や大学への進学の蓋然性がある場合には、大学卒・全年齢平均賃金を基礎とします。