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親権者の変更(調停・審判)

離婚の際に,未成年の子がいる場合,日本では単独親権制度が取られているため,夫(父)か妻(母)のいずれかを,親権者に指定する必要があります。離婚後に親権者を変更するには,家庭裁判所における調停か審判による必要があり,子の利益のため親権者変更の必要があることが条文上の要件です。

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(左寄り)弁護士重次直樹,ジオグランデ梅田,弁護士植田遼平

協議離婚の際,合意で親権者を決められる

協議離婚の場合,親権者は離婚の際に,父母の協議(合意)で決めることが出来ます(民法766条1項,逆に,親権者を決めなければ,離婚できません。民法819条1項,戸籍法76条,民法764条,民法739条)。→末尾に条文を掲載しています。

離婚後の親権者変更は,家裁の調停or審判で

離婚後に親権者を変更する場合,父母の合意だけで変更することは出来ず,家庭裁判所の調停・審判の手続きが必要です(民法819条6項)

例外として離婚後に生まれた子を認知した父を親権者と届け出る場合があります。

民法819条6項 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる

親権者変更手続き(調停,審判)

親権者変更の手続き(調停,審判)

親権者変更申立書t707

→ 裁判所ホームページ「親権者変更調停」 

同「親権者変更調停の申立」

→ 大阪家庭裁判所のページ「親権者変更」

手続きの詳細は上記ホームページが参考になります。

大阪家庭裁判所のページには,ワードで入力できる申立書の書式もアップロードされています。申立人,事情説明書,連絡メモに必要事項を記載して,申立人・相手方・未成年者の戸籍謄本や印紙,郵券と共に提出します。

親権者変更が認められる要件(子の利益)

権者変更が認められる要件(子の利益のために必要があると認める時)

子の利益のために必要があると認める時」が,親権者変更が認められる民法条文上の要件です(民法819条6項)。

このため,合意が基本の調停においても,親権者の変更を求める理由,現在の親権者の意向,これまでの養育状況,双方の経済力や家庭環境といった親側の事情に加えて,子どもの年齢,性別,性格,就学状況,兄弟姉妹との関係,生活環境などの子供側の事情を確認の上,子どもの意向を尊重した取り決めになるよう,調停では,話し合いが進められ,まとまらなければ,審判に移行して,裁判所が決定します。調停においても,両当事者の合意だけで親権変更が認められるのではなく,家庭裁判所が子の利益のため変更の必要性を認めることが必要になります(民法819条6項)

子の利益のため変更の必要性が認められる場合については,東京高裁昭和31年9月21日決定(家裁月報8巻11号37頁)が有名です。この決定は,「事情の変更」ないし「「著しい事情の変更」を要求したものとされます。一度決めた親権者をころころ変えることは,子の生育環境の安定性を害しますので,安定した人間関係や環境の下で継続的に養育されることが子の福利にかなうという考え方が前提にあります。

現実的な対応策

現実的な対応

上記の「事情の変更」「著しい事情の変更」は条文上の要件ではなく,あまり厳格にこれを求めることは,かえって子の利益にならない,という考え方もあります。しかし,そうはいっても,子の生育環境の安定性・継続的は重要です。親権変更を認めて生育環境が変更された後,実際にうまくいくかどうかの保証もありません。家庭裁判所としては,安易に親権者変更を認めることには慎重になることが考えられます。

仮に,父母の間で親権変更に合意が出来ていたとしても,いきなり裁判所に申立てを行うより,実際に親権変更の合意が上手く行くかどうか,非親権者の親が監護養育をしてみて,上手く行ってから現状追認的に申立による変更を求める方が,家庭裁判所が認める確率は高くなるようにも思われます。

離婚後の親権者変更は簡単ではありませんので,離婚に際しては,きちんと将来を見越して,取り決めをしておくことが重要と考えます。

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参照条文

民法766条1項  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

民法819条1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

戸籍法76条 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他法務省令で定める事項

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