被害者参加手続きと、2つの意見陳述
※本日、被害者参加弁護士として、交通死亡事故の公判期日に出席しました(代表弁護士)。
次回期日では意見陳述も行いますが、刑事訴訟法上の被害者の意見陳述は2つありますので、被害者参加と2つの意見陳述について、簡単に説明します。
■3面構造と被害者参加
犯罪の被害者は、かつては刑事裁判への参加が極めて限られ、裁判官、検察官、被告人および弁護人の3面構造の中で刑事裁判手続きは進められてきました。この基本構造は今日でも変わっていません。
しかし、犯罪被害者の刑事手続き関与は、着実に前進しています。殊に、平成20年12月より開始された被害者参加制度は重要です。
→ 過去の記事 被害者参加制度と交通事故
今回は、被害者参加制度における意見陳述について、記述します。
■2つの意見陳述
犯罪被害者が加害者の刑事裁判の公判で意見を述べる方法は2つあります。
1)刑事訴訟法292条の2の意見陳述(平成12年改正により新設)
2)刑事訴訟法316条の38の意見陳述=犯罪被害者参加制度(19年改正により新設)
1)は被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述です(刑事訴訟法292条の2第1項)。
すなわち、同条項は「裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする」と規定しています。
この意見陳述は、事実認定の証拠にはなりませんが、情状証拠にはなりうるものです(同条第9項)。したがって、2)の意見陳述を行う場合においても、1)の意見陳述の申出を予め検察官にしておく必要があります(同条第2項)。2)の意見陳述は、情状証拠にもならないとされているからです(後述)。
条文にある通り、1)では裁判所の許可も必要ありません。
2)は被害者参加制度による意見陳述であり、5つの参加内容の1つです(他の4つは、公判期日への出席、検察官に対する意見申述、証人尋問、被告人質問です)。
これは、「事実又は法律の適用について意見を申述する」ものであり、検察官の最終弁論である論告・求刑と同じことを、被害者も行えるようにするものです。
意見を申述できる範囲は、「訴因として特定された事実の範囲内」とされます(刑事訴訟法316条の38第1項)。
また、この陳述は情状証拠にもなりません(同条第4項)
裁判所の許可も必要です(同条1項)。この点でも、許可の不要な1)の意見陳述とは異なります。
このように、2つの意見陳述は要件や効果が異なりますので、注意が必要です。被害者参加弁護士を選任している場合には、1)の意見陳述を被害者参加人本人が行い、2)の意見陳述を被害者参加弁護士が行う、と役割分担が適切な場合も多いでしょう。
ちなみに、当事務所で現在受任している交通死亡事故の被害者参加の公判が本日行われました。意見陳述は次回ですが、1)について被害者参加人本人が、2)について被害者参加弁護士が行う予定で、その旨を本日の公開法廷でも裁判官に伝えています。