円高倒産・デリバティブ倒産(帝国DB)と金融ADR
■帝国データバンクによる円高倒産・デリバティブ倒産の集計(2011年)
帝国データバンクは2011年8月より毎月「円高関連倒産」の動向調査を特別企画として発表しています。帝国データバンクが「円高関連倒産」の集計を始めたのは、2008年1月からです。
→第5回「円高関連倒産」の動向調査(2012.1.13)
第4回「円高関連倒産」の動向調査(2011.11.9)
第3回「円高関連倒産」の動向調査(2011.10.11)
第2回「円高関連倒産」の動向調査(2011.9.8)
「円高関連倒産」の動向調査(2011.8.8)
順に見ると、
第1回 「円高関連倒産」28社(前年同日比7.7%増)
倒産原因が「デリバティブ損失」は13社(46.4%)
(以下「デリバティブ倒産」といいます)
第2回 「円高関連倒産」8月8件、累計34件
デリバティブ倒産は8月8件中4件(50%)
第3回 「円高関連倒産」9月10件、累計44件
デリバティブ倒産は2件(20%)
倒産原因はデリバティブ損失に代わって受注減少、輸出不振の原因が増えた
第4回 「円高関連倒産」10月15件、累計59件
(2008年1月集計開始以降の月間最多を更新)
デリバティブ倒産は3社(20%)
第5回 「円高関連倒産」2011年累計85件判明
(2008年集計開始後の年間最多件数を大きく更新)
デリバティブ倒産は32件(37.6%)
■金融ADRによるデリバティブ倒産の減少・回避
以前の記事でも紹介した通り、東商リサーチはデリバティブ倒産の減少に金融ADRが一定の役割を担っていることを指摘しています。
→ 以前の記事
http://www.shigetsugu-law.com/news/detail.html?type=editdisplay&id=4736
→ 東商リサーチ記事
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2012/1215996_2004.html
メガバンクなどが売った通貨オプション、為替デリバティブにより月々多大なキャッシュアウトが発生している中小企業については、早めにデリバティブの知識ある弁護士に相談し、支払い停止と金融ADRを行うことが倒産回避のためには重要であると考えています。
銀行が売った通貨オプションなどの為替デリバティブによる被害・損失については、下記の金融ADRが活用できます。
・全銀協のADR
→ 全国銀行協会相談室・あっせん委員会
http://www.zenginkyo.or.jp/adr/
・FINMACのADR
→ 証券・金融商品あっせん相談センター
http://www.finmac.or.jp/
全銀協の方が比較的早く手続きが進む傾向にあるようですが、逆に一期日での勝負になりやすく、入念な準備が必要です。
金融ADRではやり直しが効かず、1回のみ利用できます。そこで、全銀協のADRで納得できないから、FINMACで再度あっせんを申し立て解決を求める、ということは出来ません。
なお、近時、FINMACでも件数増加に伴い、手続きの短縮化・1期日勝負の傾向にあり、準備の重要性は増しているようです。