少額訴訟(簡易迅速な債権回収手続き)
少額訴訟制度とは、60万円以下の金銭支払いを求める訴えについて、原則として、1回の口頭弁論期日で審理を終了して、終了後直ちに判決を言渡す、特別な訴訟手続きです(民事訴訟法368条~381条)。
ラウンドテーブルと呼ばれる丸い机を囲んで話し合う形態を取る場合が多く、和解で終了したり、判決でも分割払いや支払い猶予が認められる場合もあり、比較的柔軟な対応を可能にしつつ、迅速な解決を行う手続きです。
制度設計時の予想以上の利用があり、限度額が30万円から60万円に引き上げられました。身近な債権回収手続きとして、利用されています。
(どのような場合に利用できるか、適しているか)
1 60万円以下の金銭給付請求に限られる。
2 原則、1回の期日で審理を終了し、終了後直ちに判決が言い渡される。そこで、証拠書面が揃っていたり、証人の出頭が確保できる場合に適している。
3 内容が複雑である場合など、少額訴訟に適さないと裁判所が判断した場合には通常訴訟に移行するため、1回の審理でも判断できる比較的簡易な案件に適している。
4 相手方が行方不明の場合、通常訴訟に移行する。従って、行方不明の場合は適さない。
(メリット)
1 簡易・迅速
1回の期日で終了し、判決が下されるため、手続き負担は軽く、簡易迅速である。
2 柔軟性
和解で終結する場合があるほか、判決でも分割払い等の柔軟な対応が行われる場合があり、通常の裁判よりは被告にとっても受け入れやすい手続きである。
(注意点・デメリット)
1 60万円以下の金銭支払請求以外では利用できない。
2 複雑な案件には適さない。
3 原告の言い分が認められる場合でも、分割払い、支払猶予、遅延損害金免除の判決がなされることがある。
4 相手方が通常訴訟への移行申立てをすると、通常訴訟に移行する。他方、原告から通常訴訟への申立てはできない。
5 判決に不服があっても上級審への控訴はできない。ただし、判決をした裁判所への異議申立ては可能である。
6 同一の簡易裁判所での利用は、年間10回までに限られる。
なお、過払い請求での少額訴訟については、貸金業者が争う姿勢を強くして、通常訴訟に移行し、長期化する例を多く見聞します。
他のサイト、例えば下記の、過払い請求を多く扱う大阪の弁護士事務所のサイトでも、同じような指摘があり、
http://www.kabaraikin.net/info2/archives/382
過払い請求で少額訴訟を行う場合については、通常訴訟に移行する可能性を充分念頭に置く必要があります。