交通事故の車両全損による物損損害賠償
交通事故で、弁護士に委任する事例は人身事故が大半であり、物損のみの事故は少ない。
ただ、車両同士の交通事故の場合、人身事故でも、付随して物損請求が発生する場合が多く、その中心が、車両の損傷です。
車両が損傷した場合、被害者は必要かつ相当な修理費用について、損害賠償請求をすることができます。
また、車両として物理的に修理不能だったり(物理的全損)、修理費用が買替費用を上回る場合(社会的全損)などでは、買替差額(=車両の事故当時の価格+買替諸費用と、事故後の売却代金との差額)を損害賠償請求することができる。
最高裁昭和49年4月15日判決は、物理的又は経済的に修理不能と認められる状態のほか、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められ、交通事故の被害車両の所有者においてその買替えをすることが社会通念上相当と認められるときも、買替差額を損害賠償請求できるとします。そして、損傷を受けた中古車の交通事故当時のにおける取引価格は、原則として、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・同項距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価額によって定めるべきであると判示しています。
問題は、登録後長期間が経過しており、市場価格が算定困難な事例をどうするかです。しっかりと損害の賠償を受けるためには、極力、類似車両の売出し価格の資料を探し集めると良いでしょう。また、民事訴訟法248条により裁判所は相当な損害額を認定できるため、被害に関する諸事情を詳しく主張すると良いでしょう。
この点について、大阪地裁平成2年12月20日判決は、登録後14年余を経過して評価額0円の小型乗用車について、車検期限まで1日2000円×96日=19万2千円の使用価値を認めて、車両についての損害賠償金額としています。
諸費用として、買替のため必要な登録、車庫証明、廃車法定手数料、ディーラー報酬部分(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料)のうちの相当額や自動車取得税、代車使用料についても、相当額について損害賠償請求が認められます。