当初0計算とは?
過払い請求を行うには、その前提として、取引履歴に基づいて法定利息に基づく引直し計算を行う必要があります。
ところが、貸金業者が古い履歴の開示を拒んだり、廃棄済などの理由で開示できない場合があります。
この場合、取引の途中からの履歴が開示されるのですが、次のような取引履歴となります。
ケース① 返済から始まる取引履歴
例えば、最初の履歴が、平成7年10月1日の返済1万円、返済後の残高が38万9675円、という事例で説明します。
平成7年10月1日において、既に相当期間、利息制限法の制限を超える金利で利息を支払い続けていた場合には、同日の1万円の返済前に、既に払い過ぎにより債務が消滅していた可能性があります。
そこで、当初0で計算を初め、次に平成7年10月1日の1万円の支払いで過払金が1万円発生した、次の返済1万円でさらに過払いが増えた、という具合に、0から初めて、2番目以降を開示された履歴に基づき計算します。
ケース② 端数を含む金額から始まる取引履歴
例えば、平成5年3月5日に当初債務額39万8456円で始まる履歴を説明します。この場合、最初の取引から端数というのは通常はあり得ません。そこで、それまでに相当期間、利息制限法の制限を超える金利で利息を支払い続けていた場合には、同日の債務が既に利息の払い過ぎにより0になっていた、として、次の履歴から計算を始める、という計算を行います。
【実際の事例】
実際に当初0計算で訴訟を行ったレイクの事例で説明します。
1)レイクへの過払い請求において、① 開示履歴では過払金180万円となるが、②古い履歴が欠けているため、「当初0計算」による320万円で訴訟を提起しました。
2)レイクは「320万円は多すぎる、当初取引開始日は●●だから、払い過ぎにより債務が約定残高よりは減っていたとしても、当初0円まで減額するのは減らし過ぎだ」と主張して、その根拠として契約書を提出してきました。
3)そこで、③当初契約書により開始日が判明した後は、取引開始日から推定される金額に基づいて再交渉を行い、最終的に250万円で和解した、という事例です。
開示履歴のみでは180万円だったのが、当初0計算での訴訟により、レイクから契約書提出を引き出し、推定計算に基づいて250万円を回収しました。
開示履歴での計算180万円より70万円も多く回収しています。