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【コロナ関係】休業補償【事業者側】

 3つのパターン(0%,60%,100%)

1)労基法上も民法上も,支払い義務がない場合(0%)

・・・不可抗力の場合

2)労基法上の休業補償(60%)のみ,支払い義務がある場合

・・・使用者に故意・過失はないが,使用者側に起因する経営管理上の障害による場合

3)労基法上も民法上(100%)も,支払い義務がある場合

・・・使用者に故意・過失がある場合

 

労働基準法における休業補償は,民法よりも使用者に厳しいため,上記3パターンが基本になります。就業規則や労使合意などによって2)3)の中間の扱いも考えられます。

 

基本的な法律関係(条文と効果)

労働基準法の条文(26条)と効果

(休業手当)
労働基準法第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

→ 労働基準法26条により「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合,使用者は平均賃金の60%以上を休業手当として支払う必要があります。

 

「使用者の責に帰すべき事由」は,民法の同一文言よりも相当に広く(使用者に厳しく),使用者側の起因する理由である限り,不可抗力以外は含まれる,と言われています。

 

民法の条文(536条)と効果

(債務者の危険負担等)
民法第536条1項 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる

 民法第536条1項により,使用者・労働者のいずれにも帰責事由がなく,債務履行(=労務提供)ができなくなった場合債権者(使用者)は反対給付(賃金支払い)を拒むことが出来ます(労働者は賃金支払いを請求できません)

 

民法第536条2項 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

→ 民法第536条2項により,債権者(使用者)の帰責事由で債務履行(=労務提供)が出来なくなった場合,債権者(使用者)は賃金の支払いを拒むことができません(労働者は賃金を100%請求できます)

ここでの「使用者の責に帰すべき事由」は,労働基準法より狭く(使用者に厳しくなく),使用者に故意・過失又はこれと同視すべき事由がある場合と解されています。

 

「責めに帰すべき事由」の理解(労基>民法)

「責めに帰すべき事由」の具体的内容,限界については,一概には言えませんが(事例ごとの個別判断になります),前述のとおり,労働基準法26条の「責めに帰すべき事由」は,民法536条2項の「責めに帰すべき事由」より広いと解されています。

民法536条2項の「責めに帰すべき事由」は,一般的に故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由と言われています。

これに対して,労基法26条の「責めに帰すべき事由」は,故意・過失等より広く,不可抗力は除かれますが,使用者側に起因する経営管理上の障害」を含むと解されており(最判昭62.7.17,ノースウエスト航空事件),労働者保護の観点から,広く解されています。

 

そうすると,コロナ対策や自粛要請を受けて事業所を閉鎖し,休業するような場合には,たとえ使用者に故意・過失がなく民法上の帰責事由(責めに帰すべき事由)があるとは言えない場合でも休業の原因が使用者の支配領域に近いところから発生しており,不可抗力ではない場合,「使用者側に起因する経営管理上の障害」と認定される可能性が高いと言えます。この場合,60%の休業手当を支払う義務が生じます。

 

また,新型コロナのため,故意・過失なく事業所を休業する場合でも,代替手段(例えば配置転換や在宅勤務ができないか,等)について充分に検討されていない場合などでは,労務提供ができないことについては使用者に故意・過失があると認定されて,60%部分だけでなく,100%の支払義務が認定される可能性があります。

 

使用者の対策

したがって,使用者が法的リスクを避けるには,不可抗力と言える場合以外は,コロナ関係でやむを得ず休業する場合でも,60%の休業補償を行う方が安全です。

また,休業手当について,就業規則や雇用契約書上,6割支給などが明記されている場合等を除いては,従業員との合意により,どの程度の賃金を払うかを決めるなど,協議・合意のプロセスを経て,後日100%の請求をされてリーガルリスクを回避することが勧められます。

 

次に述べる雇用調整助成金を活用することで,資金負担の相当部分を回避しうることになります。ただし,相談や申請が殺到しており,相当時間がかかる可能性があること,助成金を受けるまでの資金負担が生じること,については,留意が必要です。

 

雇用調整助成金の特例と活用

★追記(2020.4.28):助成率が拡充され最大100%との報道がありましたが,実際には,60%を超える部分についての100%であり,最大,94%にとどまります(上限8330円の規制は残存)

60%超える部分の100%

https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000625165.pdf

 

(参照サイト)

厚生労働省 雇用調整助成金 コロナ特例 → こちら → 動画案内

休業補償については,雇用調整助成金の活用が考えられ,特に,コロナ対策の特例措置で,従前よりも相当に有利になっています。

他方,現実問題には,簡略後もなお手続きが煩雑であること申請が殺到して通常以上に時間がかかっていること,2か月~半年以上も待たされる可能性があるとも伝えられていること(政府は1か月に短縮としましたが,現実の支給実績はわずかです),支給が確実に受けられるか確定していない中で,使用者には資金負担が生じること,など,問題が指摘されています。

雇用調整助成金特例

手続きの流れ

→ 簡略化後の必要書類等

 

★雇用調整助成金については,全国社会保険労務士会連合会のホームページが詳しく,動画解説もあります。 → こちら

①制度概要

②申請手順

③教育訓練加算

 

(厚労省解説動画)

【上乗せ特例】2020.4.1-2020.6.30

助成率の引き上げ(中小で80%or90%まで)

教育訓練の加算額を引き上げ

・教育訓練の範囲拡大

・生産指標の要件緩和(10%減→5%減

・支給限度日数(1年100日)とは別枠

雇用保険に入っていないパート・アルバイトも対象(緊急雇用安定助成金)

【運用特例】

・事後提出可能期間の延長

・短時間休業の条件緩和

・休業規模の要件緩和

・残業相殺制度の当面停止

【書類の簡素化】

 

(関連サイト)

厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

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