身元保証と民法改正後の身元保証書
目次
動画解説
身元保証二関スル法律
身元保証契約は,使用者と被用者の関係を前提に,被用者が使用者に損害賠償責任を負う場合に,身元保証人がこの債務を保証する,身元保証人・使用者間の契約を言います。
身元保証契約については,保証期間や金額限度の定めがないことが多く,保証人に過大な責任を負わせるべきではない,という観点から,「身元保証二関スル法律」により,期間等に制限が加えられています。
保証期間の制限(身元保証法1条,2条)
1)期間の定めがない場合・・・契約成立から3年間
(ただし,商工業見習者は5年間)
2)期間を定めた場合・・・5年間まで
(更新も可能だが,更新期間も5年間まで)
使用者の保証人への通知義務(身元保証法3条)
使用者は,①保証人に責任が発生する恐れがある場合や,②任地・任務変更により保証人の責任加重又は監督困難になった場合,遅滞なく保証人に通知すべきことが定められています。
保証人の将来に向けての解除権(4条)
保証人は,3条の通知を受けた時や,①②の事実を知ったときは,将来に向けて身元保証契約を解除できます。
改正民法(令和2年4月1日施行)との関係
改正民法は,個人根保証契約は極度額を定めなければ効力を生じないと定めます(465条の2Ⅱ)。
身元保証契約も,個人根保証契約(※)の一種ですから,極度額を定めないと,効力を生じません。
※根保証契約とは,一定の範囲に属する不特定の債務を主債務とする保証債務を言います。
そこで,今後は,身元保証契約において極度額の定めが必須となります。
身元保証書例(改正法施行後)
身元保証書
○○社 御中
私○○○○は,このたび,貴社に採用される○○○○(本人)が,法令,貴社の諸規則,及び貴社との合意事項を遵守することを,身元保証人として保証します。
万一,本人が故意又は過失により貴社に損害を与えた場合は,身元保証人として,本人と連帯して賠償の責を負うことを誓約します。ただし,保証限度額は○○○円までとします。
本件身元保証の期間は,本日より5年間とします。期間満了後も本人が引き続き貴社に勤務する場合には,期間満了に際して,本契約を5年間,更新し,改めて保証書を差し入れます。
令和○年○月○日
本人
現住所 氏名 捺印 生年月日
身元保証人
住所 氏名 捺印(実印) 生年月日 本人との続柄 勤務先
【参照条文(改正民法)】
第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。