海外赴任と基準変更による婚姻費用の大幅増額
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海外赴任と基準変更による婚姻費用の大幅増額
海外赴任による夫の収入増と,令和元年12月23日の養育費・婚姻費用の基準変更が重なり,婚姻費用増額請求審判申立事件において,婚姻費用を大幅に増加する審判(月14万円→24万円)に至りました。(その後,即時抗告で月22万円に再変更)
【追記】月24万円払います,という夫のメールがあり,遡っての支払いもあって,即時抗告をしないものと思われました。しかし,期限ギリギリで高裁への即時抗告がありました。即時抗告審では,原審から2万円減額の22万円となりました(申立前月14万円→22万円)
①海外赴任による収入の大幅増
会社員が海外赴任した場合,国内勤務時と比較して,収入は大幅に増加するのが通常です。海外赴任手当により,収入が倍になったり,増収分で家が建つ話もよく聞きます。今回の事例でも,5割程度の収入増が認定されています。
海外赴任による義務者の収入増は,婚姻費用の増額に直結します。
②基準変更による増額
令和元年12月23日に発表された養育費・婚姻費用の新基準(令和元年基準)により,基準額が増額されています。報道では,変わらず~1万円程度の増額とされましたが,高額所得層では増額幅は大きく,最大で6万円の増額ゾーンがあります。
今回も,旧基準であれば,2万5千円~3万円程度,低い認定だったと思われます。
③申立月に遡っての増額
養育費や婚姻費用では,請求は申立月に遡って認められるのが通常です。
今回も5か月余遡っての決定となりました(過去分で+50万円)。【追記】即時抗告により過去分は+40万円に変更されました。
申立て手続き
海外赴任の場合,調停でなく,審判を申立て
調停の場合,相手方住所地に裁判管轄があるため,海外勤務の夫を相手に増額調停の申立ては出来ませんでした。もっとも,2019年4月1日以降,双方日本人夫婦の場合,日本で調停ができるようになっています。
【条文】家事事件手続法3条の13第1項 裁判所は,家事調停事件について,次の各号のいずれかに該当するときは,管轄権を有する。
一 当該調停を求める事項についての訴訟事件又は家事審判事件について日本の裁判所が管轄権を有するとき。
他方,審判の場合,申立人住所地にも裁判管轄があります。また,海外赴任先から婚姻費用調停のために帰国することは,非現実的です。
このため,海外赴任中の夫を相手に婚姻費用増額を求める場合,調停ではなく,審判申立てを行うのが通常です。
書式(裁判所ホームページ)
婚姻費用分担請求に関する申立書の書式・記載例等は,裁判所ホームページからダウンロードできます。