自賠責保険の支払基準改正の告示(2019.10.4)
目次
自賠責保険の支払基準改正の告示
2019年(令和元年)10月4日,自賠責保険の支払基準の改正案が告示されました。2020年(令和2年)4月1日施行予定です(公布予定は令和元年12月上旬)。施行日以後の事故には新基準が適用される予定です。
改正理由
改正理由は,以下の2点です。
①法定利率の変更(5%→3%)
民法の法定利率 が 年5%から3%に改正されます(2020.4.1施行)なる。将来の収入を現在価値で評価する場合,法定金利により中間利息控除を行います(ライプニッツ係数を使用)が,5%と3%では数値が大きく異なる(※)ため,法定金利の変更を反映させます。
例えば,18歳で亡くなり,67歳まで49年間働けた場合,法定利率5%で中間利息を控除すれば,実際は49年分ではなく,18.169年分の逸失利益しか貰えませんが,法定利率3%であれば,25.502年分となります。
②平均余命,物価水準,賃金水準の変動や支払実態の反映
当初の基準は2002年(平成14年)4月1日施行,前回が2010年(平成22年)4月1日施行であり,この間に,平均余命,物価・賃金水準や,支払い実態の変動があるため,これらを反映させます。
主な改正内容
傷害(治療期間の損害)
入通院慰謝料,休業損害,看護料について,増額予定です。
改正前 | 改正後 | |
入通院慰謝料 | 4200円/日 | 4300円/日 |
休業損害 | 5700円/日 | 6100円/日 |
入院中の看護料 | 4100円/日 | 4200円/日 |
自宅看護料・通院看護料 | 2050円/日 | 2100円/日 |
後遺障害慰謝料(治療後も残存した損害)
後遺障害慰謝料は,13級・14級を除き,以下のとおり,増額予定です。
①別表第1(要介護)
改正前 | 改正後 | |
1級 (被扶養者あり) |
1600万円
(1800万円) |
1650万円 (1850万円) |
2級 (被扶養者あり) |
1163万円
(1333万円) |
1203万円 (1373万円) |
②別表第2
改正前 | 改正後 | |
1級
(被扶養者あり) |
1100万円
(1300万円) |
1150万円
(1350万円) |
2級
(被扶養者あり) |
958万円
(1128万円) |
998万円
(1168万円) |
3級
(被扶養者あり) |
829万円
(973万円) |
861万円
(1105万円) |
4級 | 712万円 | 737万円 |
5級 | 599万円 | 618万円 |
6級 | 498万円 | 512万円 |
7級 | 409万円 | 419万円 |
8級 | 324万円 | 331万円 |
9級 | 245万円 | 249万円 |
10級 | 187万円 | 190万円 |
11級 | 135万円 | 136万円 |
12級 | 93万円 | 94万円 |
13級(※) | 57万円 | 57万円 |
14級(※) | 32万円 | 32万円 |
(※)変更ありません(13級,14級)。
死亡
葬儀費用,死亡慰謝料の本人分が以下の通り,改正される予定です。
改正前 | 改正後 | |
死亡慰謝料
(本人分) |
350万円 | 400万円 |
葬儀費用 |
60万円 (立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は,100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする) |
100万円 |
就労可能年数とライプニッツ係数表
(改正後)
平均余命年数とライプニッツ係数表
(改正後)
給与評価額の変更
前回は平成12年賃金センサスに基いており,今回は平成30年賃金構造統計調査に基づき,改正しています。男性は減少傾向,女性は増額傾向にあります。
ライプニッツ係数の対照表
※自賠責では小数点以下3桁までで計算します(裁判では4桁が通常)
平均余命年数 | 5%(改正前) | 3%(改正後) |
1年 | 0.952 | 0.971 |
3年 | 2.723 | 2.829 |
5年 | 4.329 | 4.580 |
8年 | 6.463 | 7.020 |
10年 | 7.722 | 8.530 |
15年 | 10.380 | 11.938 |
20年 | 12.462 | 14.877 |
25年 | 14.094 | 17.413 |
30年 | 15.372 | 19.600 |
40年 | 17.159 | 23.115 |
50年 | 18.256 | 25.730 |
60年 | 18.929 | 27.676 |
70年 | 19.343 | 29.123 |
80年 | 19.596 | 30.201 |