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引用文書に関する文書提出命令申立の成功

文書提出命令申立の成功:引用文書

当事務所において,引用文書に関する文書提出命令申立を行い,認容された事例を紹介します。引用文書の提出命令認容決定は,珍しい事例(※)だと思います。

決定マスキング+赤線

※引用文書とは,当事者が訴訟において引用した文書で自ら保持するものであり,引用以外の部分を開示されると困る場合,弁護士は当該文書の引用に慎重になるし,開示されても困らない場合は,命令される前に任意に開示するため,引用文書の提出命令に至る数は少ない,と考えられます。

 

過去の認容裁判例

引用文書の提出命令が認容された裁判の公開情報には,以下があります。

・(新潟地裁平成29年1月13日決定(抗告審で取消))

・神戸地方裁判所平成16年1月14日決定

・京都地方裁判所平成15年1月15日決定(抗告棄却)

・東京地方裁判所平成11年7月5日決定

・(大阪地方裁判所昭和45年11月6日決定(抗告審で取消))

(一部認容は上記より多くあります)(以上はTKCでの判例検索結果です。他にも公開裁判がある可能性はあります)

 

条文

民事訴訟法第220条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない

一 当事者が訴訟において引用した文書自ら所持するとき

 

引用文書の意義

 

大阪高裁平成10年10月21日決定

民訴法220条1号所定の当事者が訴訟において引用した文書とは当事者が口頭弁論や弁論準備手続、準備書面、書証の中で、立証又は主張の助け、裏付けもしくは明確化のために、その存在及び内容について、積極的に言及した文書をいう。

当事者が訴訟において所持する文書を自己の主張の裏付けとして積極的に引用した以上その文書を提出させて相手方の批判にさらすのが公正であり当事者が当該文書の秘密保持の利益を積極的に放棄したものといえるから、引用文書について提出義務を認めたものである。」

 

伊藤眞 民事訴訟法(第3版再訂版379頁)

「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するときには,その提出義務を負う(220① )。立法の趣旨は,以下のように解される。すなわち,当事者が自己の主張を基礎づけるために積極的に文書の存在または内容を引用した以上,少なくとも相手方当事者との関係では,文書を秘匿しようとする意思はないと考えられるし,また,その主張は弁論の全趣旨として裁判所の心証に影響を与えるから,相手方当事者に文書の内容についての立証の機会を与えることが公平に合致するというものである」

 

必要性と許容性

上記大阪高裁決定と伊藤眞教授の記述は,ほぼ同趣旨・同内容です。

必要性としては,相手方にも批判・立証の機会を与えることが公平であること,許容性としては,既に当事者が秘匿を破って自ら開示していること,が挙げられます。

 

本件の対象文書

今回,申立を行った対象文書は,以下のⒶⒷで,Ⓐは申立後の任意開示,Ⓑは認容決定となりました。

 

Ⓐ原告と参加人の携帯電話メッセージ(原告がマスキングをして一部を開示)について,マスキング部分を含む全部(求釈明後,任意の開示を拒んだため,全部について提出命令申立て)

→ 申立後,原告より任意開示 → 申立てを取り下げ

 

原告と友人のLINEのやりとり(原告がマスキングをして一部を開示)について,マスキング部分を含む全部(求釈明後,任意の開示を拒んだため,全部について提出命令申立て)。

→ 申立後も,任意の開示がない → 提出命令の認容決定

 

コメント

 

立法趣旨から見た本件決定の正当性

 

引用文書について,提出命令が認められる趣旨は,前記の大阪高裁決定や伊藤教授が述べている通りです。

すなわち,自らの主張立証の助け,裏付け,明確化のため,積極的に引用した以上,①相手方の批判にさらすのが公正であり,②秘密保持の利益も積極的に放棄したと言える,という点にあります。

本件のように,会話の一部のみの開示では,開示部分さえ,前後の文脈の中での意味が把握できず,ミスリーディングであることは,①に含まれると言えます。

 

弁護士選択の重要性

 

本件では,相手方の弁護士は,新人であり(訴訟提起時1年目,現在,2年目),マスキング部分を含む全体が引用文書として文書提出命令の対象となることを知らなかったのではないかと思われます(20枚以上の会話を提出,マスキングしていないのは,10行未満で,マスキング部分の開示に強く抵抗)。

近時,該当分野の専門事務所でインターネットなどで積極的に宣伝し,人員を増やしているところ等で新人メンバーや新規進出分野について,教育が行き届いていないのではないか,大丈夫か,と心配になるケースが多く見られるようになりました。

これは,①弁護士増員政策の失敗国の制度や業界の問題)であると同時に,②当該事務所の問題(能力の低い新人弁護士への教育やチェックの問題),③当該弁護士の問題(資格を有する以上,文書提出命令のような民事訴訟法の基本条文は内容を押さえて,先輩上司の指導がなくても,最低限の基本は理解して業務を行うべき,という本人の努力・能力・姿勢の問題),という各段階での問題があるように思われます。

現在でも,予備試験合格者のように,数パーセントの狭き門を通り抜けて法曹資格を取得する人もおり,優秀な新人も多数いるはずですが,法科大学院制度の導入後,特に,法学部・司法試験の人気低迷と受験者激減後,人材劣化がないとは言い難い状態です。

弁護士の選択においては,能力・経歴・実績等について,チェックが必要であることを,近時の状況を見て,益々,強く感じます。

資格や業界への信用が問われる由々しい問題状況を感じます。

 

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