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当事務所の解決事例

【TFCC損傷】受任2か月で提示約570万から約1000万に増額して示談した事例

被害者 40歳代男性(兵庫県在住)
傷病等 TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)
後遺障害等級 12級
基本過失割合 二輪車の対応図なし(四輪なら10%~30%)
手続き種類 示談交渉

交通事故の概要

バイク同士の事故。同一方向で進行中,加害者の急な車線変更により横から体当たりされて転倒した。被害者は手を使う仕事をしており,TFCC損傷を明らかにすれば,配置換えや,最悪の場合には失業もしかねない状態に陥った。

判例タイムズ上,二輪で過失割合を示す該当図はなく,四輪の図では基本過失割合は10%又は30%だった。しかし,回避不可能な衝突の仕方であり,加害者も保険会社も過失割合100:0での対応を約束し,約570万円で提示した。もっとも,当事務所の弁護士が介入して高額請求した後は,保険会社が10%の過失相殺を主張し始めた。

なお,依頼者の住所は兵庫県でしたが,事故発生地は大阪府内であり,地方裁判所の管轄も大阪地方裁判所本庁となる地域でしたので,管轄の面での心配なく受任しました(訴訟の場合の管轄は,被害者の住所地又は事故発生地が原則です)。なお,交通事故紛争処理センターの支部は,基本的に高裁所在地であり(東京・札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・高松・福岡),大阪府以外の住所や交通事故発生地でも,大阪市中央区にある大阪支部で対応可能です。

解決までの経緯

依頼者は弁護士費用特約で弁護士費用を捻出できました。また,TFCC損傷を職場に隠しており,手を使う仕事でしたが,示談交渉時点では収入減少が生じていない事例でした。更に,当初100:0での対応を約束されたとはいえ,10%程度の過失相殺をされる余地のある事案でした。以上から,訴訟は避けるべき事案でした。

すなわち,訴訟で判決まで戦うメリットの一つに,遅延損害金と弁護士費用が認められる点があるのですが,弁護士費用特約が付いていた場合,弁護士費用の二重取りは出来ないため,訴訟するメリットが小さくなります。また,訴訟時点では実収入が減っていない(→12級の等級通りの労働能力喪失率14%が認められない→逸失利益が認められない)ことや,過失相殺を主張される危険性があります。逆に,訴訟の過程で後遺障害が職場に知れてしまい,配置転換や失業に至る別のリスクもありました。

100:0で損害金額を弁護士基準で計算したところ,約1020万円となりましたが,訴訟回避・早期解決のため,約20万円譲歩して,約1000万円で和解しました。

TFCC損傷

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)とは,手関節の尺骨側に位置する線維軟骨・靭帯複合体のことです。その構成要素には,①関節円板(三角繊維軟骨ともいう。TFC),②メニスカス類似体,③掌側・背側橈尺靭帯,④尺骨三角骨靭帯,⑤尺骨月状骨靭帯,⑥尺側側副靭帯,が含まれます。

交通事故でもバイク・自転車・歩行者が転倒して手を付いた場合などで,良く発生する症状です。客観的・他覚的にTFCC損傷を証明できれば,後遺障害12級が認定されます。ただし,「他覚的証明」について,自賠責調査事務所は近時ますます高レベルの証明を要求しています(※)。12級の場合,裁判基準での後遺障害慰謝料は大阪地裁基準で280万円(赤い本で290万円,青い本で250~300万円),労働能力喪失率は14%が基準となります。

後遺障害の等級認定上,MRI画像など他覚的・客観的な所見でTFCC損傷が証明されたと認められれば,12級と認定されますが,さらに,可動域が2分の1に制限され,同可動域制限が合理的・客観的に説明される場合には,10級と認定される可能性もあります。

他方,医師がTFCC損傷と診断した場合でも,「他覚的な証明」に至っていないと調査事務所が判断して,非該当とされたり,14級しか認定されないケースも見られます。

(※)他覚的証明のため,MRI撮影は必須と思われます。造影MRIでの画像を取ったり,手関節鏡検査での所見を得ることも効果的と考えます。更に,尺骨頭を押した際の反応,ピアノキーテスト,クリック音など,画像以外にも,できる限り,後遺障害診断書に他覚所見を詳しく記載してもらうべきと考えます。

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