妻から離婚調停を申し立てられたが,調停の過程でやり直しを求められ,子供とも会えた事例
手続種類 | 離婚調停 |
依頼者 | 30代男性(会社員) |
妻 | 30代女性(会社員,資産家・企業家の娘) |
子供 | 1名(幼少) |
居住 | 3年以上 別居(妻が子を連れて実家に戻り,夫も賃料の安い所に転居) |
事案内容
妻が離婚調停を申し立てた。驚いた夫(依頼者)は離婚するにしても協議離婚を希望していた。別居後,子供と会えていなかったが,調停申立書を見て驚いて実家に行った際,義母の配慮で3年ぶりに少しだけ抱かせてもらった。妻は資産家・企業家の一人娘であり,父親が選んだと思われる遠方の弁護士が代理人となり,強く離婚を主張し,対立感情を悪化させる態度を取った。夫の暴力を強調し,高額の慰謝料・財産分与・婚姻費用・養育費を求めてきた。
夫は妻の離婚歴や過去の重い男性関係を承知の上で,妻を伴侶と選び結婚した。しかし,結婚後の妻の男性との交友(複数の約束違反を含む)に不満を持っていた。妻が子供の面倒を見る約束の日に,子を託児所に預けて男性と二人で終日過ごしたことに激怒して喧嘩・揉み合いとなり,意図せず妻に怪我をさせてしまった。夫は,妻の両親に怪我の原因となった喧嘩の理由を問い詰められたが,夫は妻の男性関係について,一切,話さなかった。怪我の日以降,妻は実家に帰っている。
解決への経緯
妻の実家の意向が別居や離婚申立てに反映していると思われる事案でした。
喧嘩の原因となった妻の男性関係については,口頭で先方代理人(部下の女性弁護士)に内々に伝えて書面化を回避していましたが,上司の男性代理人(代表弁護士)は書面で書くよう要求しました(対立を激化させて離婚に持っていこうとする印象でした)。喧嘩と怪我は別居の直接の原因となる重要事実であり,やむを得ず,なるべく対立感情を悪化させないよう,慎重に言葉を選び,夫から妻子への配慮や愛情が伝わる文章を提出しました。
高額の金銭要求に対しては,妻が多額の配当収入(親の会社の株式の配当)を秘匿し,これに一切手を付けず貯蓄に回していた点を指摘し,「勤労収入800万円の者と,配当収入800万円の者が,養育費や婚姻費用を取り決める場合,勤労者のみに全額を負担させることは,著しく不公平」との主張を行いました(実際には本件で妻の配当所得は夫の勤労所得の約2倍でした)。
なお,「未成熟子を親が監護・教育する扶養義務」(民法第820条)は生活保持義務とされ,「自己と同等の生活」を保障するものと理解されていますが,同条のどこを読んでも,資産や配当収入は除外して,勤労収入のみによるべきことを示す文言はありません。資産や親から受け継いだ資産からの果実(配当・賃料等)をどう評価するか,今後の議論や実務の進化が待たれます。
別居や怪我の元となる喧嘩の理由が妻の男性関係にあったこと,夫が問い詰められながら妻に配慮して男性関係について妻の両親に一切話さなかったことが,妻の両親にも好意的に伝わったと思われ,途中で妻がやり直しを求めるようになりました(妻の代理人は少なくともその後もしばらくは離婚させたがっている印象でした)。
調停期間中に,親子3人で会ったり,夫婦でデートするようになり,調停はあたかも円満調停の様相を呈した後に不成立で終了し,離婚の求めも慰謝料などの求めもなくなりました。