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【交通死亡事故】葬儀関係費用300万円取得事例(基準150万円)と最高裁判例

交通死亡事故における葬儀関係費用の裁判基準額は150万円とされていますが,2倍の300万円の葬儀関係費用(裁判所案)で訴訟上の和解が成立した成功事例が複数あり,主張上のポイントを解説します。特に昭和44年2月28日最高裁判決が重要です(詳細後述)。例えば,死亡した夫のため,妻が新たなお墓を作った場合,葬儀費用とは別に,お墓の費用を上乗せすべきです。

葬儀費用の最高裁判例 要旨

(前提)葬儀関係費用の賠償額基準(150万円)

交通事故の賠償基準(交通事故以外でも広く用いられる)は「赤い本」などによる賠償基準が実務上,用いられています。このうち,葬儀関係費用の基準は150万円とされるのが一般ですが,特に若い方の葬儀関係費用については,150万円より大きな金額の主張が認められる余地が大きいと考えられます。実際,当事務所でも300万円で訴訟上の和解が成立した事例が複数あります。

 

【裁判所から葬儀関係費用300万円で提示があり,訴訟上の和解が成立した事案の該当部分】

裁判所 和解案1 300万円

(同額の和解成立がもう一件あります)

 

第一のポイントは,最判昭和44年2月28日に基づいて,墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費を主張することです(詳細後述)。

㋐ 死亡した妻が,既にある夫のお墓にはいる場合など・・・墓碑建設費等の加算は不可(支出なし)

㋑ 死亡した夫のお墓を新たに作ったが,いずれ妻も入る場合・・・支出もあるが利益もあり→墓碑建設費等の加算は一部のみ

㋒ 20歳代の被害者(夫)のお墓を妻が新たに作った場合・・・今後60~70年程度は他の家族が使用する予定がない(転居等もあるため,同じ墓を使わない蓋然性も高い) → 墓碑建設費等は全額(or大半)の加算を主張すべき

44年最判によれば,㋐㋑㋒で金額が異なる筈(後述)→ 特に㋒のケースでは,お墓の費用(都市部では相当高い)の加算について被害者は主張すべき。

※近時の裁判所は一律150万円で認定する傾向があるが,遺族のため代理人が主張して戦うべき。

 

第二のポイントは,葬儀関係費用にかぎらず,若年被害者の損害賠償全般において,物価上昇率の歴史的な水準を主張することです(後述の判例事案の現在物価価値ご参照)。所得が平均以下の方の死亡事故で賠償金1億超取得した事例(法定利率5%時代の事故)が複数ありますが,いずれも若年者であり,物価上昇率の歴史的水準を強く主張した事例です。

 

基準書

赤い本(2025/令和7年版)70頁

葬儀費用は原則として150万円。但し,これを下回る場合は,実際に支出した額。香典については損益相殺を行わず,香典返しは損害と認めない。

(事例紹介が続く)

⑴ 認定例 ①170万円余を認めた事例 ②180万円を認めた事例 ③200万円を認めた事例 ④250万円を認めた事例 ⑤300万円を認めた事例

⑵ 仏壇・仏具購入費・墓碑建立費を別途認めた事例

⑶ 遺体搬送料・遺体処置費等を別途認めた事例

 

大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第4版)4頁・30頁

150万円(4頁・30頁)

31頁「葬儀関係費としては,葬祭費,供養料のほか,墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費等がある。被害者や遺族の宗教,地域の習|貫等によって,葬儀等の規模や内容が異なり,支出される金額も様々であるが,交通事故と相当因果関係を有するものとしては,一般的に必要と考えられる金額をもって損害と認めることとしたものである。ただし,実際に支出した額が基準額を下回る場合は,実際に支出した額をもって損害と認めるのが相当である。」

 

4頁30頁

(注)①死亡の事実があれば,葬儀の執行とこれに伴う基準額程度の出費は必要なものと認められるものの,実際に支出した額が基準額を下回る場合は,実際に支出した額も考慮して相当額を算定する(★2版までは「特段の立証を要しない」だった)。
②葬儀関係費は,原則として,墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費・遺体処置費等の諸経費を含むものとして考え,特別の事情がない限り,基準額に加えて, これらの費用を損害として認める扱いはしない
遺体運送料を要した場合は,相当額を加算する。
香典については,損害から差し引かず香典返し,弔問客接待費等は損害と認めない。

 

31頁 最高裁判決を2件引用

・最判昭和43年10月3日

・最判昭和44年2月28日 ・・・ 若者が基準超の葬儀関係費用を主張する際に特に重要

 

葬儀関係費用に関する大審院・最高裁判例

⑴    大審院明治44年4月13日判決

殺人事案において,葬式費用の損害賠償義務を認めた死が早晩訪れ,葬式費用がいずれ必要となることは,考慮対象外とされた。

 

⑵    大審院大正13年12月2日判決

大正9年3月に発生した交通事故(電車と歩行者)の事案において,「故意又ハ過失ニ因リ人ノ生命ヲ害シタル者ハ其ノ葬儀ニ関スル費用ヲ損害トシテ賠償スヘキ」として,屍体運搬・葬式費用として支出された770円58銭全額の賠償を命じた原院の判断に不法はないとした。

【主張内容】

なお,大正9年から平成27年(本件事故の2年前)までに,物価や賃金は6500倍以上に上昇しており(※),大正9年当時に認められた葬式費用等の770円58銭は,平成27年においては,少なくとも500万円の価値になっている。

(※)物価賃金等の変化(大正9年→平成27年)

・大工手間賃日給(東京) 2.9円→1.9万円(6552倍

・給与所得者年収 583円→420万円(7204倍

★官吏(大正9年の583円)と民間(平成27年の420万円)の違いがあるが,大正9年当時,官吏の方が給与水準は高かった(国家公務員初任給75円>大卒銀行員初任給40円)から,大正9年の民間給与の統計があれば,平成27年の民間給与はその1万倍を超えていたと見られる。

・国家公務員初任給 75円→18万1200円(2416倍)

★初任給では,進学率・就任時年齢の大幅な向上を差し引く必要がある。

・大卒初任給 40円→20.5万円(5125倍)

★大卒者の希少性が大幅に減少した点を考慮する必要がある。

2416倍,5125倍で計算しても,大正9年当時の770円58銭は,平成27年には,約186万円,約395万円の価値となる。

⑶    最高裁昭和43年10月3日判決(甲80,以下,「43年最判」という)

「葬式費用として原判示の支出をしたことは、原判決挙示の証拠に照らし肯認することができるし、右費用は、その額その他原審認定の諸般の事情に徴し、社会通念上不相当な支出とは解されない。そして、遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によって生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもって、右賠償を免れる理由とすることはできない。」とした。

【コメント】当初の最高裁判例は,「特に不相当なものでない限り」賠償すべきとしていた(150万円までが相当などの限定はなかった)。

 

⑷    最高裁昭和44年2月28日判決(44年最判) ☞ こちら

昭和38年9月に発生した交通死亡事故(被害者は事故当時3歳)の損害賠償請求事件において,最高裁は,以下のとおり,判示した。

「人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもってその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によって死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によって生じた損害でないとはいえない。死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然にその遺族の責務とされることではあっても、不法行為のさいに当該遺族がその費用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によって生じた事態であって、この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別するいわれがないものというべきである(大審院大正一三年(オ)第七一八号同年一二月二日判決、民集三巻五二二頁参照)。したがって、前記の立場にある遺族が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害者に対して請求することができるものと解するのが相当である。

もっとも、その墓碑または仏壇が、当該死者のためばかりでなく、将来にわたりその家族ないし子孫の霊をもまつるために使用されるものである場合には、その建設ないし購入によって他面では利益が将来に残存することとなるのであるから、そのために支出した費用の全額を不法行為によって生じた損害と認めることはできない。しかし、そうだからといって右の支出が不法行為と相当因果関係にないものというべきではなく死者の年令、境遇、家族構成、社会的地位、職業等諸般の事情を斟酌して、社会の習俗上その霊をとむらうのに必要かつ相当と認められる費用の額が確定されるならば、その限度では損害の発生を否定することはできず、かつその確定は必ずしも不可能ではないと解されるのであるから、すべからく鑑定その他の方法を用いて右の額を確定し、その範囲で損害賠償の請求を認容すべきである」

 

【主張補足】

この事件では,被害者実父が墓碑について25万円余,仏壇について1万0550円を支出している(計約26万円)。当時の賃金水準は本件事故時(平成29年)の10分の1以下であるから,上記計26万円は,本件事故時の260万円以上に相当する

★葬儀費用やお墓代の平均的費用の参考サイト★

・りそなグループ「葬儀費用の平均相場はどれくらい?知っておきたいポイントあわせて解説」 ☞ こちら

・鎌倉新書「いいお墓」「お墓の値段と費用内訳–永代使用料・墓石費用・管理費の平均価格」 ☞ こちら

主張上のポイント

当事務所が葬儀関係費用について裁判所から300万円の提示を受けて訴訟上の和解成立した事案が複数あることは,その事案の性質による可能性もある。いずれも判決ではなく,訴訟上の和解である。

しかし,上記最高裁判例を見れば,150万円基準と最高裁判例の相違点が明らかに存在する。

今日の物価に置き換えれば,150万円をはるかに超える葬儀関係費用を認めていた

遺族の負担した葬式費用は、それが「特に不相当なものでないかぎり」、人の死亡事故によって生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当としていた。

・【特に若年死亡被害者で重要】家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その建設ないし購入によって他面では利益が将来に残存することとなるのであるから、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害者に対して請求することができるとしていた。

ただし,当該死者のためばかりでなく、将来にわたりその家族ないし子孫の霊をもまつるために使用されるものである場合には、支出費用の全額を不法行為によって生じた損害と認めることはできないとしていた。

【3パターンがある!】

既にあるお墓に入る場合・・・墓碑建設等は不要(死亡した妻が夫の墓に入る場合など)

新たにお墓を作る場合でも,いずれ配偶者が入る場合など・・・墓碑建設等は必要だが,いずれ配偶者や子らも使う→利益も残る→全額賠償は出来ない(墓碑建設費用等は一部のみ請求可能)

20代の被害者(夫)のお墓を妻が新たに作る場合など・・・あと50~70年くらいは他の家族が使用する予定はない→中間利息を控除すれば,利益はほとんどない(40年後にそのお墓をほかの家族が使うかどうかも分からない)→ほぼ全額の賠償が出来るはず(44年最高裁判例にしたがえば)

 

超長期での物価水準・賃金水準の上昇率の参考サイト ☞ 「明治~令和 値段史」

例えば,

・醤油1リットル 1870年6銭 → 2024年313円(5217倍)

・大卒銀行員初任給 1880年8円 → 2024年251,300円(31,413倍)

戦後だけ見ても

・高卒男子初任給 1950年3500円→2024年200500円(57.3倍)

・巡査初任給 1950年3991円→2024年193,400円(48.5倍)

・1人1日の食費 1950年50円→2024年895円(17.9倍)

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