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【離婚の判例】東京高裁平成30年12月5日判決

離婚に関する東京高裁平成30年12月5日判決

離婚に関して,興味深い判決が出ています。東京高裁平成30年12月5日判決(判例タイムズ1461号126頁)です。

離婚しようと思う側が,一方的に別居を開始した場合でも,別居期間が3年~5年になれば,婚姻関係が破綻したものとして,5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)を認められ,離婚請求が認容されるのでは,いかにも不当,という私の問題意識に,正面から答えてくれた判決です。名判決だと思います。

なお,判例タイムズ1461号(2019年8月号)には,第三者に対する離婚慰謝料に関する重要最高裁判例(最判平31.2.19)も収録されています。 ☞ 最判平31.2.19の解説

 

【第一審】

別居期間が7年近くに及び,原告の離婚意思も強固で,5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)があると判断し,原告の離婚請求を認容

 

【控訴審】=東高判平30.12.5

要旨と結論

【1】5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)がない,【2】離婚請求は信義則違反

→ 原判決を取り消し,離婚請求を棄却

 

【1】5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)がないこと

・婚姻により家事専業者となった配偶者の経済的立場に配慮(他方配偶者が婚姻費用分担義務(民法752条)を負わない状態に放り出されると,経済的苦境に陥ることが多い)

・夫婦の性格の不一致等により婚姻関係が危うくなった場合においても,離婚を求める配偶者は,まず,話し合いその他の方法により婚姻関係を維持するように努力すべき

・離婚請求者側が婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠る場合別居期間が長期化したとしても,ただちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難

・★★第1審被告がし合いを望んだが叶わなかったとして離婚を希望する場合には本件のような別居の事実は婚姻を継続し難い重大な事由になり得るが,話し合いを拒絶する第1審原告が離婚を希望する場合には本件のような別居の事実が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというには無理がある★★

→ 同じ別居の事実でも,被告が離婚を主張する場合,5号離婚事由になり得るが,(話合いを拒んで別居状態を作出した)原告が離婚を主張する場合,5号離婚事由には当たらない

 

【結論】

婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえないから,第1審原告の離婚請求は理由がない(離婚を認めず)

 

【2】離婚請求が信義則違反であること

・別居期間が7年以上に及んでいることが婚姻を継続し難い重大な事由に当たるとしても離婚請求は,身分法をも包含する民法全体の指導理念である信義誠実の原則に照らしても容認されることが必要

当事者が信義則について主張していなくても判断すべき

・離婚請求が信義誠実の原則に反しないかどうかを判断するには,

①離婚請求者の離婚原因発生についての寄与の有無,態様,程度

②相手方配偶者の婚姻継続意思及び離婚請求者に対する感情

③離婚を認めた場合の相手方配偶者の精神的,社会的,経済的状態及び夫婦間の子の監護・教育・福祉の状況

別居後に形成された生活関係

時の経過がこれらの諸事情に与える影響

などを考慮すべき(有責配偶者からの離婚請求についての最高裁昭和62年9月2日大法廷判決の説示は、有責配偶者の主張がない場合においても,信義誠実の原則の適用一般に通用する

・「別居が一定期間継続した後に行われる離婚訴訟では,日本の法律のもとでは離婚が認められてしまう」という極端な破綻主義的見解(有責配偶者からの請求でない限り,他にどのような事情があろうと,別居期間がある程度継続すれば必ず離婚請求が認容される)は,当裁判所の採用するところではない

・①婚姻を継続し難い重大な事由の発生原因は,専ら第1審原告の側にあることは明らか

・③離婚を認めた場合には,第1審原告の婚姻費用分担義務が消滅する。専業主婦として婚姻し,職業経験に乏しいまま加齢して収入獲得能力が減衰し,第1審原告の不在という環境下で義父及び子2人の面倒を一人でみてきたことを原因とする肉体的精神的負担によるとみられる健康状態の悪化に直面している第1審被告は,離婚を認めた場合には,第1審原告の婚姻費用分担義務の消滅と財産分与を原因として○○のマンションという居住環境を失うことにより,精神的苦境及び経済的窮境に陥るものと認められる。二女もまた高校生であり,第1審原告が相応の養育費を負担したとしても,第1審被告が精神的苦境及び経済的窮境に陥ることに伴い,二女の監護・教育・福祉に悪影響が及ぶことは必至

第1審原告は,婚姻関係の危機を作出したという点において,有責配偶者に準ずるような立場にあるという点も考慮すべき

・第1審原告は,今後も引き続き第1審被告に対する婚姻費用分担義務を負い将来の退職金や年金の一部も婚姻費用の原資として第1審被告に給付していくべきであって,同居,協力の義務も果たしていくべき

 

判決原文(抜粋,第3の2,第4,手紙)

第3 当裁判所の判断

2 第1審原告の離婚請求の当否について

(★重次法律事務所の註:以下の(1)は5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)に関する判断,下線・太字・色字は弁護士重次直樹による)

(1)婚姻も契約の一種であり,その一方的解除原因も法定されている(民法770条)が,解除原因(婚姻を継続し難い重大な事由)の存否の判断に当たっては,婚姻の特殊性を考慮しなければならない。殊に,婚姻により配偶者の一方が収入のない家事専業者となる場合には,収入を相手方配偶者に依存し,職業的経験がないまま加齢を重ねて収入獲得能力が減衰していくため,離婚が認められて相手方配偶者が婚姻費用分担義務(民法752条)を負わない状態に放り出されると,経済的苦境に陥ることが多い。また,未成熟の子の監護を家事専業者側が負う場合には,子も経済的窮境に陥ることが多い。一般に,夫婦の性格の不一致等により婚姻関係が危うくなった場合においても,離婚を求める配偶者は,まず,話し合いその他の方法により婚姻関係を維持するように努力すべきであるが家事専業者側が離婚に反対し,かつ,家事専業者側に婚姻の破綻についての有責事由がない場合には,離婚を求める配偶者にはこのような努力がより一層強く求められているというべきである。また,離婚を求める配偶者は,離婚係争中も,家事専業者側や子を精神的苦痛に追いやったり,経済的リスクの中に放り出したりしないように配慮していくべきである。ところで,第1審原告は,さしたる離婚の原因となるべき事実もないのに(第1審原告が離婚原因として主張する事実は,いずれも証明がないか,婚姻の継続を困難にする原因とはなり得ないものにすぎない。),南品川に単身赴任中に何の前触れもなく突然電話で離婚の話を切り出し,その後は第1審被告との連絡・接触を極力避け,婚姻関係についてのまともな話し合いを一度もしていない。これは,弁護士のアドバイスにより,別居を長期間継続すれば必ず裁判離婚できると考えて,話し合いを一切拒否しているものと推定される離婚請求者側が婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠るという本件のような場合においては,別居期間が長期化したとしても,ただちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難である。第1審被告が話し合いを望んだが叶わなかったとして離婚を希望する場合には本件のような別居の事実は婚姻を継続し難い重大な事由になり得るが,話し合いを拒絶する第1審原告が離婚を希望する場合には本件のような別居の事実が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというには無理がある。したがって,婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえないから,第1審原告の離婚請求は理由がない。

(★重次法律事務所の註:以下の(2)は信義則(信義誠実の原則)に関する判断

(2)仮に,婚姻関係についての話し合いを一切拒絶し続ける第1審原告が離婚を請求する場合においても,別居期間が平成23年7月から7年以上に及んでいることが婚姻を継続し難い重大な事由に当たるとしても,第1審原告の離婚請求が信義誠実の原則に照らして許容されるかどうかを,検討しなければならない

離婚請求は,身分法をも包含する民法全体の指導理念である信義誠実の原則に照らしても容認されることが必要である。離婚請求が信義誠実の原則に反しないかどうかを判断するには,①離婚請求者の離婚原因発生についての寄与の有無,態様,程度,②相手方配偶者の婚姻継続意思及び離婚請求者に対する感情,③離婚を認めた場合の相手方配偶者の精神的,社会的,経済的状態及び夫婦間の子の監護・教育・福祉の状況,④別居後に形成された生活関係,⑤時の経過がこれらの諸事情に与える影響などを考慮すべきである(有責配偶者からの離婚請求についての最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁の説示は、有責配偶者の主張がない場合においても,信義誠実の原則の適用一般に通用する考え方である。)。第1審原告代理人(当時)による「別居が一定期間継続した後に行われる離婚の訴訟では(中略)日本の法律のもとでは離婚が認められてしまう」という極端な破綻主義的見解(甲5,有責配偶者からの請求でない限り,他にどのような事情があろうと,別居期間がある程度継続すれば必ず離婚請求が認容されるというもの)は,当裁判所の採用するところではない。

 

本件についてこれをみるのに,婚姻を継続し難い重大な事由(話し合いを一切拒絶する第1審原告による,妻,子ら,病親を一方的に放置したままの7年以上の別居)の発生原因は,専ら第1審原告の側にあることは明らかである。他方,第1審被告は,非常に強い婚姻継続意思を有し続けており,第1審原告に対しては自宅に戻って二女と同居してほしいという感情を抱いている。離婚を認めた場合には,第1審原告の婚姻費用分担義務が消滅する。専業主婦として婚姻し,職業経験に乏しいまま加齢して収入獲得能力が減衰し,第1審原告の不在という環境下で●●(註:義父)及び子2人の面倒を一人でみてきたことを原因とする肉体的精神的負担によるとみられる健康状態の悪化に直面している第1審被告は,離婚を認めた場合には,第1審原告の婚姻費用分担義務の消滅と財産分与を原因として○○のマンションという居住環境を失うことにより,精神的苦境及び経済的窮境に陥るものと認められる。二女もまた高校生であり,第1審原告が相応の養育費を負担したとしても,第1審被告が精神的苦境及び経済的窮境に陥ることに伴い,二女の監護・教育・福祉に悪影響が及ぶことは必至である。他方,これらの第1審被告及び二女に与える悪影響を,時の経過が軽減ないし解消するような状況は,みられない。そして,本件の事実関係の下においては,亡一郎と第1審被告との養子縁組の届出が第1審原告の同意を得ないまま行われたことは,第1審原告が亡一郎及び第1審被告との連絡を絶つという姿勢をとっていたことにも原因があるのであって,第1審被告側の信義誠実義務の原則に反する事情として評価することは,不適当である。同様に,第1審原告に知らせないまま亡一郎の生命保険金受取人が第1審原告から子らに変更されたこと及び第1審被告が亡一郎から実家不動産の売却余剰金の贈与を受けたことを,第1審被告側の信義誠実の原則に反する事情として評価することも,不適当である。以上の点を総合すると,本件離婚請求を認容して第1審原告を婚姻費用分担義務から解放することは正義に反するものであり,第1審原告の離婚請求は信義誠実の原則に反するものとして許されない第1審原告は,今後も引き続き第1審被告に対する婚姻費用分担義務を負い,将来の退職金や年金の一部も婚姻費用の原資として第1審被告に給付していくべきであって,同居,協力の義務も果たしていくべきである。

 

 

第4 結論

以上によれば,第1審原告の本件離婚請求は理由がないから棄却すべきところ,これと異なり第1審原告の本件離婚請求を認容した原判決は失当であって,第1審被告の本件控訴は理由があるから,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野山宏 裁判官 橋本英史 裁判官 吉田彩)

 

原告代理人から被告への手紙(判決文より)

別居が一定期間継続すれば,○○氏(第1審原告)は,裁判により離婚することができます別居が一定期間継続した後に,行われる離婚の訴訟では,貴女が離婚をしたくないと主張をしたとしても,裁判所は,婚姻を継続し難い重大な事由があるとして,離婚を認めることになります。すなわち,貴女が離婚をしたくないと考えたとしても,日本の法律のもとでは,離婚が認められてしまうことになるのです。裁判所が,離婚を認めた場合には,裁判所が,○○氏(第1審原告)と貴女の間の法律関係・財産関係を法律に基づいて,機械的に処理することになります。(中略)財産分与は,結婚から別居までの婚姻期間中に形成された財産を分けるものですので,別居後に増えた財産は対象となりません。そのため,いつ離婚をしたとしても財産分与の額が増えることはありません。もっとも,不動産については,清算を行う時点で評価を行いますので,築年数の経過により,不動産の価値が減少し,財産分与の額は減少することになります。(中略)貴女と○○氏(第1審原告)が離婚を避けることはできず,裁判による離婚では,財産分与及び養育費はおおむね機械的に定められることになりますが,当方としては,貴女及びお子様達の今後の生活を考慮し,離婚に関する問題について話し合いを行うことを前提に,以下のご提案をさせていただきます。(中略)○○氏(第1審原告)も,現時点では,法律に従い,不動産を売却して売却益を折半とする方法での財産分与を考えております。もっとも,離婚を協議で進めていただけるようでしたら,売却益の折半よりも貴女に有利な方法での財産分与を行うこともやぶさかではありません。(中略)裁判により離婚が成立することになりますと,養育費は算定表に基づいて金額を定められることになり,○○氏(第1審原告)と貴女の場合には,18万円程度となります。養育費は,お子様の生活にかかる費用を負担するものですので,婚姻費用よりも金額が下がりますが,協議による離婚であれば,婚姻費用に近い額で養育費を定めたいと考えております。(中略)先日,貴女から,○○様(二女)が○○氏(第1審原告)に会いたいとおっしゃっているとお電話でお聞きをしましたが,離婚について争いがある現状では,○○氏(第1審原告)もお子様とスムーズにお会いできない状況にあります。当方としては,1日も早く離婚を行うことがお子様の安定にもつながるものと考えております。

 

 

コメント

内容について

上記手紙の弁護士のように,別居原因がどのようなものであれ,別居して3年~5年程度が経過すれば,裁判所は離婚を認める,というのでは,いかにも不当であり,殊に,専業主婦として職業キャリアを積んでこなかった配偶者は経済的困難に遭遇する確率が高くなり,一層,不当です。

しかしながら,本件原審がそうであったように,近時の裁判例では,別居期間が一定程度に達すれば,離婚を認める傾向がありました。

これに対して,本件控訴審は,別居原因や経過を問題として,妻側からの離婚請求なら5号離婚事由となり得る別居状態でも,話し合いを拒んで7年の別居状態を作出した夫からの離婚請求では5号離婚事由にならない,と判断して,離婚請求を棄却しました。

加えて,当事者(妻)からは,請求の信義則違反も,夫が有責配偶者であることも,主張されていないのに,最判昭62.9.2の基準に照らし,仮に5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)が認められたとしても,夫からの離婚請求は信義則違反で認められないとしました。

更に,第1審原告は,今後も引き続き第1審被告に対する婚姻費用分担義務を負い,将来の退職金や年金の一部も婚姻費用の原資として第1審被告に給付していくべきであって,同居,協力の義務も果たしていくべき,とまで判示しました。

一定期間の別居期間を作出すれば,家事・育児・介護を続けた専業主婦を放り出して離婚出来る,と言う原告・原告代理人の態度に対する強い怒りが感じられる判決であり,結論は妥当だと思います(名判決と思います)。

 

 

最大判昭和62年9月2日判決(有責配偶者からの離婚請求が認められる場合)について

東高判平成30年12月5日も引用する昭和62最高裁判決は,離婚に関する最重要判決の一つです。(解説ページは制作中です)

専門的になりますが,昭和62年最大判の要件事実を分析すると,大きく分けて,以下の4つの考え方があり得ると思います。

要件事実t1

要件事実t2

要件事実t3

要件事実t4

 

東高判の論理と要件事実について

専門的になりますが,民事訴訟における要件事実の考え方からは,東高判の内容は議論の余地があると思います。私自身は,東高判の判断構造(前図Ⅳ)は,実務的に価値が高いと考えています5号事由を認めない場合でも,信義則の判断に踏み込んだ方が,法律関係の早期安定,訴訟経済に資するからです。

一般に,離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由を含む)は原告が主張立証を要する「要件事実」であり,㋐原告(X)が有責配偶者であること,あるいは,㋑離婚請求が信義則違反であることは,被告が主張立証を要する「抗弁」と考えられてきました(Ⅰ,Ⅲ)。

Ⅰ:X(原告)有責を抗弁とする考え方(その1)

要件事実t1

この考え方は,①相当長期間別居,②未成熟子なし,を再抗弁(原告に主張立証責任),③離婚により相手方配偶者が極めて過酷な状況に置かれるなど著しく社会正義に反する特段の事情のないことを再々抗弁(被告に主張立証責任)とします。

 

Ⅱ:X(原告)有責を抗弁とする考え方(その2)

要件事実t2

 

Ⅲ:離婚請求が信義則違反であることを,抗弁とする考え方

要件事実t3

これに対して,5号事由は,1号~4号と異なり,2項の制限がかからないため,5号事由の該当性自体が規範的判断を要すること,信義則は民法全体の指導理念であり離婚請求も信義則に照らして容認されるべきことなどから,信義則違反でないことも,請求原因(原告が主張立証責任)と見る考え方もありえます。5号該当性とは別要件とする考え方(Ⅳ図),5号に内在する要件とする考え方があり得ますが,昭和62年最大判の文言は前者(Ⅳ図)に親近性があります。

Ⅳ:本件東京高判

本件東京高判は,Ⓐ第一審被告(妻)が,離婚請求の信義則違反も,原告が有責配偶者であることも,主張していないのに,また,Ⓑ要件事実である5号離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)が認められないと判断した以上,信義則違反を判断するまでもなく,離婚請求が認められないのに原告の離婚請求が信義則に照らし許容されるかどうか,検討しなければならない,と述べた上で,最判昭62年9月2日の判断基準により,離婚請求は信義則違反としています。

これは,信義則違反が,5号該当性とは別の請求原因(Ⅳ図)と考える判断構造と考える枠組みです(Ⅳ)。

要件事実t4

なお,有責配偶者とは認定していないことから,Ⅳの亜種と見ることも出来ます。

要件事実4修正

 

Ⅱ 離婚請求が信義則違反でないことを再抗弁とする考え方

要件事実t2

例えば,最判平16.11.18(判時1881-90)の下記文言は,Ⅱの考え方に親和性があると思われます。

「そうだとすると,有責配偶者からされた離婚請求については,①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるか否か,②その間に未成熟の子が存在するか否か,③相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するか否か等の諸点を総合的に考慮して,当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには,当該請求を認容することができると解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。」

 

実務メリットが大きいⅣの判断構造

要件事実t4

Ⅳの判断構造のみが,5号該当性の判断と,信義則違反の判断が,要件事実上,同列であり,実務上のメリットが大きいと言えます。

たとえば,別居期間が2~4年程度で,破綻(婚姻を継続し難い重大な事由)の認定が微妙な場合,仮に破綻を否定された場合,信義則に関する判断は不要となり,判断されない傾向があります。

しかし,別居期間は自然に伸びますから,破綻状態と言える別居期間に至った場合,信義則違反になるかどうか,予め判断する実務上の必要性は,法律関係の早期安定の観点からも,訴訟経済の観点からも高いと言えます。

 

本件高裁判決については,Ⅳの判断枠組により,5号該当性(婚姻を継続し難い重大な事由)を否定する判断を行いながら,Ⅰ~Ⅲの枠組みでは不要となる「信義則違反」の判断を積極的に行った点でも,高く評価したいと思います。

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