民事執行における「子の引渡し」 その2
前回の投稿に続き,民事法研究会発行,杉山初江著の民事執行における「子の引渡し」を紹介します。
今回は諸外国における子の引渡しの強制執行について,同著の内容から説明します。
1 ドイツ
・子の引渡についての特別な法令を定めて,直接強制を含めた強力な執行方法を規定している。
・強制的実現の方法として,①強制金の賦課,②強制拘禁,③有形力の行使(直接強制)がある。
上記について,浦野教授は,直接強制という手段がいざというときの後ろ盾として用意されていること自体が大きな意味を持っている,として評価している。
2 フランス
・離婚は全て裁判離婚であり,合意だけでは離婚が成立しない,という離婚法制を取っている。
・弁護士強制である(費用は公的支援がある)
・子の引渡しについては,刑事罰が主戦場であり,刑法典の「未成年者と家族への侵害」の章に,「親権行使への侵害」という節がある。
・以上のとおり,民事執行手続きではなく,刑事罰による強制により,子の引渡しの実効性を担保している。
3 アメリカ
・州ごとに法規制が異なる。また,連邦裁判所と州裁判所がある。
・家事事件は州裁判所の管轄である。
・離婚はすべて裁判所による訴訟手続きによる。
・子の引渡しの強制執行については,家庭裁判所が監護命令執行としてシェリフ(執行官)又は警察官に銘じて行う。
・子の引渡しを実現するため,次のような法的担保がある。①裁判所侮辱罪,②家庭裁判所による監護命令の執行,③人身保護手続き,④検察官による保護命令の執行,⑤誘拐罪。