過払い金返還の3基準・・・弁護士>司法書士>本人
過払い請求への対応については,大手消費者金融・クレジット各社は,どういう相手方であれば,どの時期ないし方法なら,どの程度の割合まで過払い金を支払うかについて,社内基準を持っています。
この基準には,弁護士基準,司法書士基準,本人基準があり,同じ時期や手段(訴訟か訴訟前か)であれば,金額は弁護士>司法書士>本人となっています。また,同じ金額では,入金が早期となる順に,弁護士,司法書士,本人となっており,マトリックスを形成しています。
私は実際に,メガバンクが経営を支える大手の消費者金融の担当者から,マトリックスを見せられたことがあります。弁護士が相手となっている場合には,訴訟前であれば,和解日から3ヶ月以内の入金であれば,5%なしの計算に対して最高○割まで支払うが,6ヶ月だと○割,司法書士の場合は,3ヶ月だと○割,6ヶ月だと○割,本人だと○ヶ月なら○割・・・,といった具合に,各社が社内基準を設けています。
これは,重次法律事務所に対しては訴訟前の弁護士基準の最高額を払うから,訴訟で支払日まで5%を付加した満額請求を追求せず,早期で和解して欲しい,という依頼だったのですが,依頼というより,脅かしのような交渉で,しつこい要求でした。
弁護士は個別の依頼者の意向に応じて,ベストを尽くすことが求められており,各依頼者の個別の意向を無視して,上記担当者の要求に応じることは,消費者金融側に立つものと捉えかねられず,弁護士法や職務規程への違反になりかねません。まじめな弁護士事務所では,上記のような依頼に応じて過払い請求の和解基準について消費者金融会社と包括的な合意をし,訴訟をせずに訴訟前和解で低い金額の過払い金取得により事件を回転させるようなことはしないでしょう。
かつて,平成19年ころは,本人や司法書士でも熱心な交渉により満額獲得が出来る場合がありましたが,昨今は特に本人による交渉による満額回収は非常に難しいと言って良いでしょう。また,当事務所では140万円以上の案件が金額で約半分ですが,このような金額の案件について,司法書士が満額回収をすることも困難でしょう(そもそも権限がありませんが,書類作成は出来ますと主張する司法書士は多いようです)。
消費者金融の経営自体が過払い金の支払いで苦しくなり, 訴訟をしなければ5%の過払い利息を付さないなど,対応を厳しくせざるを得ないことが背景にあると考えられます。
交通事故の損害賠償で,裁判基準(弁護士基準)>任意保険基準>自賠責基準と金額が大きく異なるのと似ており,消費者金融のマトリックスにおいて獲得できる過払い金については,弁護士>司法書士>本人となっています。
このため,過払い金を早期かつ高額に回収するには,訴訟も辞さない熱意ある弁護士に依頼することが重要です。