ブラックリストを避け、完済してから過払い請求をする場合の問題点
いわゆるブラックリスト(正確には個人信用情報の事故情報の記載)を避けるため、完済をしてから過払い請求をする、という考え方があります。例えば、アメーバブログで私のブログにぺたをくれた下記サイトもその例です。
http://ameblo.jp/mokotan1208/entry-10779559370.html
その場合の問題点は、完済した金額が全額過払い金だったとしても、貸金業者はすんなりと返済しない、ということです。
例えば、私の事務所の依頼者Aさんの例を取ります(掲載了承済)。
ブラックリスト掲載を避けるために、Aさんはアコムに対して、平成22年9月30日に125万円を返済し、さらに翌日の10月1日に128万3011円を入金して(合計入金額は253万3011円)、完済しました。
ところが、法定利息でAさんが9月30日に支払うべき金額は103万5753円であり、同日の125万円返済の時点で、既に21万4247円の過払金が発生していました。翌日1日入金の128万3011円は全額が過払いで、合計149万7287円の過払い金が発生しました(うち、元金149万7258円、利息29円)
Aさんは本人交渉により、過払い金返還請求を続けました。アコムは当初、半額程度しか提示せず、交渉につれて提示額を引き上げましたが、90万円台が限度でした。
Aさんは、おかしい、不当だ、と思い、大阪で過払い請求を大々的にやっている大手の司法書士事務所にいきました。しかし、Aさんのこだわる全額請求では140万円を超えているため、司法書士に権限がありません。平成22年11月19日、私の事務所を訪問し、過払い請求を委任しました。
交渉の結果、12月末までに149万7258円の過払い元金全額を支払う和解が11月24日に成立し、12月24日に全額入金となりました。
上記の例で、Aさんはブラックリストは避けられましたが、70万円程度の損をする可能性があり、弁護士依頼後も、上手くいったとはいえ、弁護士報酬分はマイナスとなりました。
仮にAさんが、完済前に取引履歴を請求し、引直し計算をして、必要金額の全額(9月30日時点で103万5753円)のみ支払った場合、過払い金を半分も値切られる危険性はなく、弁護士に委任して報酬を支払う必要もなかったでしょう。
約定金利計算で完済までしなくても、法定金利計算でやや多めの110万円を入金し、少額(6万円余程度)の過払い状態にしてから債務整理をした場合でも、事故情報記載が禁止されています。
もっとも、約定金利で完済していない場合、過払いと判明するまでの短期間、事故情報が載る場合があるようです。(このこと自体、不当なことですが、アコムの場合、弁護士からの受任があった時点で事故情報を載せ、過払いと判明した時点で抹消する、という扱いをしていることを、アコム本社から確認したことがあります)
しかし、短期掲載のリスクまで避ける必要がないのであれば、20%を超える高利の約定金利計算で完済までする必要はありません。
(なお、本件のように、消費者金融が元金全額を訴訟前に支払うことは、近時では極めて稀です。この例では、Aさんが本人交渉で満足せず、司法書士事務所でも140万円超の全額返還を求めた、という経緯があり、私の事務所では過払い訴訟の実績が多数あった上、たまたま本社担当者と連絡中だったため、例外的に訴訟前の早期・ほぼ満額の入金になりました)
詳しくは債務整理や過払い請求の得意な弁護士に相談されることをお勧めします。