光市母子殺人事件の死刑確定と、被害者参加
昨日(平成24年2月20日)、光市母子殺人事件の最高裁判決があり、上告棄却により死刑が確定することになりました。
この事件は、犯罪の被害者や遺族の立場について議論を呼んだだけではなく、実際に遺族である本村洋さんの活動が被害者のためのいろいろな制度につながりました(本村さんは全国犯罪被害者の会の活動などを通して、制度の導入に大きな役割を果たしました)。
光市の判決があった昨日、実は私(当事務所の代表弁護士重次直樹)も、交通死亡事故の被害者参加弁護士として、法廷で証人尋問や論告求刑意見の陳述などを行っていました。
私は自宅に戻ってニュースを聞いた後にネットで調べるまで、本村さんの被害当初の体験や、自分がまさに経験した被害者参加制度に本村さんが貢献していたことについて、詳しく知りませんでした。
※本村さんの手記は、当初白書より見易いS警察署のサイトにリンクしていましたが、22日には削除されたため、平成19年度版 犯罪被害者白書にリンクし直しました。
→ 19年犯罪被害者白書 目次
→ 犯罪被害者白書
→ 内閣府 犯罪被害者等施策のサイト
犯罪の被害者遺族となることは、なかなか自分ごととして捉えることは難しいでしょうが、被害者の多くが苦しんでいる現実について、少しでも知っていただき、また、想像力を働かせて頂くことができれば、と思い、本村さんの手記<被害者の声>を紹介した次第です。
■死刑廃止論の賛否
私は冤罪がありうることから、少しでも犯人性(=誰が犯人であるか)に疑いの余地がある事件については、死刑を排し、終身刑を導入すべきだという立場です。
私自身、昨日は被害者側に立ち、死亡事故の被害者参加弁護士となりましたが、平成18年~19年、強姦被疑事件・強制わいせつ被告事件で被疑者・被告人の弁護人となり、無罪判決率0.1%台、人質司法と言われる厳しい刑事司法の中で、何とか無罪判決を勝ち取ることができました。自称「被害者」である女性と「被害者」支援の弁護士、警察、検察、令状裁判官との戦いは非常に厳しく苦しいものでした。その際の経験から、冤罪は決して珍しいことではなく、冤罪の被害者は少なくないと肌で感じます。
他方、反省が不十分な被告人が少なくないこと、被害者遺族の感情の強さや失われた命の重さから、犯人性(=誰が犯人であるか)に疑いの余地がない事件についてまで死刑廃止とすることには、必ずしも賛成できません。
冤罪があり得る状況の中で死刑を存続させるべきか廃止すべきか、については、非常に難しい問題だと思います(なお、日米以外の先進国のほとんど又は全部が死刑を廃止しており、死刑廃止はEUの加盟状況になっています。→死刑廃止国と存置国)が、裁判員制度や被害者参加制度により、刑事司法が専門家だけの世界から、一般参加の機会が増える方向にあり、死刑の是非も含め、刑事司法のあり方について、多くの人に考えて欲しいと思い、広く報道された事件をきっかけに、ブログではなく事務所の本サイトに敢えて投稿いたしました。