破産件数の推移 平成23年まで
以前のブログ記事で破産法のDVD勉強会を始めたことを案内した。
http://www.shigetsugu-law.com/wp/archives/265
その授業の初回に破産の件数推移の紹介があったので,もう少し詳しく調べてみた。
NBL977号に「平成23年における倒産事件申立ての概況」という記事がある。裁判所が平成23年の速報値を含めて,動向を伝えている。両者を合わせると,裁判所における破産の新受件数の推移は下記の通りである。
(西暦) (個人破産) (個人以外=法人等)
1990年 11,480件 988件
1995年 43,649件 2,838件
2000年 139,590件 6,268件
2002年 214,996件 9,471件
2003年 242,849件 8,951件
2004年 211,860件 8,401件
2005年 184,923件 8,256件
2006年 166,339件 8,522件
2007年 148,524件 9,365件
2008年 129,883件 11,058件
2009年 126,533件 11,424件
2010年 121,150件 10,220件
2011年 100,735件 9,714件
個人破産が平成15年(2003年)の24万2849件から半分以下(▲59%)も減っているのに対して,その他(法人等)破産では,ピークが平成21年(2009年)と遅く(1万1424件),そこからの下落も小さい(▲15%)。
個人破産の減少には,過払い請求を容易にする最高裁判決の影響が大きいと考えられ,取引履歴の開示義務を認めた17年判決や,過払い金に対する法定利息の付利を認め,過払い請求権の消滅時効期間を10年とした平成19年判決の前後で,大きく破産が減少している。
他方,法人破産では過払い金の影響は少ないため,減少率も少ないと考えられえるが,これとは別に,金融円滑化法の影響が指摘されている。
山本教授によれば,過去,日本における破産件数は極めて少なく,米国の100万件に対して,日本では1万件に達したことが学者の間で話題になっていたそうだ。それが,一時は24万件にも達していたのだから,相当な増加だろう。
「大コンメンタール破産法」には司法統計年報からの引用があり,これによると,破産新受件数は
昭和27年 1,531件
昭和30年 1,949件
昭和40年 2,514件
昭和50年 1,408件
昭和55年 2,877件
昭和57年 5,031件
昭和58年 17,878件
昭和59年 26,384件
昭和60年 16,922件
昭和62年 11,584件
平成元年 10,319件
平成2年 12,478件 ・・・ 2000年
となる。昭和56年に3000件,57年に5000件,58年に1万件,59年に2万件と急速に増えた後,再び減少に転じて平成元年には10,319件にまで落ちている。その後,平成15年の252,800件まで急増した後,再び急減したが,10万件は超えている状況だ。
日本は一時,消費者金融が余りにも拡大して多重債務問題が悪化していたが,貸金業法が改正され,個人破産は今後は平成15年ほどの件数にはならないだろう。
他方,来年春に金融円滑化法案の期限切れとなったのちは,法人の倒産処理の増加が懸念される。
ちなみに,下記のロイター記事によると,米国の2012年上半期の破産申請件数は,前年同期に比べて14%減少し、63万2130件となったそうだ。14%も減少し,半年だけで63万件超(年126万件のペース)という数字は,日本と米国の法文化の違いを感じさせる。人口あたり10倍程度も申立件数が違っており,法曹人口問題でも参考になりそうだ。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK816256620120706
なお,別の記事では,米国破産法の2005年改正法前のピークでは,四半期で60万件を超えていたそうだ。