アメリカ法律事務所の視察旅行について
★米国サンフランシスコへの法曹視察★
当事務所の代表弁護士は,米国の法律事務所や法曹界の状況を視察するため,8月8日(木)~14日(水),カリフォルニア州サンフランシスコに出張します。7日(水)は休暇とする可能性があります。
大阪⇔羽田,羽田⇔サンフランシスコ(約10時間)の移動があるため,実質は9・10・11・12日の4日間の視察です(東京中心に日程が組まれており,深夜に羽田発着となるため,大阪の弁護士は前後2日を要します)。
予定では,6つの米国法律事務所の視察,およびアメリカ法曹協会(ABA,American Bar Association)の視察が中心で,ナパバレーの観光もツアーに組み込まれています。
★法律事務所の視察★
下記事務所を含む6法律事務所を視察する予定です。
【初日(9日) サンフランシスコ】
1 McGovern Escrow Services (初日 9日 9:00-10:00) → サイト
エスクロー(不動産取引等の決済保全制度)サービスを個人で提供している事務所
2 Bravo & Margulies (初日 9日 10:30-11:30) → サイト
不動産と個人の傷害についての法律業務を行う事務所。交通事故分野を得意としている。
1・2の事務所はサンフランシスコ市のスピア・ストリート・プラザ内にあります。
【4日目(12日) サンノゼ】
3 First American Title (4日目 12日 9:00-10:00) → サイト
エスクローサービス大手。リチャード・チェン氏からエスクローサービスについてレクチャーを受ける予定です。
4 Hopkins & Carley A Law Corporation (4日目 12日 10:30-11:30) → サイト
シリコンバレーを代表する大手法律事務所。建設、企業法務税務、労働法、金融機関法務、不動産、個人資産など幅広く扱う。
5 McManis Faulkner (4日目 12日 13:00-14:00) → サイト
幅広い分野を扱うが、家族法に強いのも特色の事務所。弁護士約20名。
※当初予定されていた下記事務所の視察は、実現されませんでした。
1 Dolan Law Firm 交通事故を専門的に取扱う法律事務所
バイクの交通事故に特化したサイトも有しており,日本よりもサイトの分化が進んでいるようです。
2 Silverman & Silverman 家族問題 (離婚,子供の権利,DV,親権,同性愛など) を専門的に扱う法律事務所。女性弁護士が多い。
3 Bryan Hinshaw 家族問題 (離婚,親権など)とビジネス法務,不動産法務を専門的に扱う法律事務所
4 Manning & Kass 企業法務を中心とし,弁護士数の多い(100名以上)法律事務所
★ABA アメリカ法曹協会の視察★
下記のプログラムに参加する予定です(変更になる場合もあるようです)
1 2012年最高裁判決のレビュー
2 Dodd Frank Act における通報制度の最新事情
3 弁護士のための最先端IT技術 = より速く,より良い正義のため
4 ロバート判事の法廷
【コメント】
米国の法曹・弁護士制度は下記のように日本と大きく異なる。
・米国は他民族国家で判例法主義であるため,社会や紛争解決における法律や契約の占める役割の割合が日本より大きく,常識や信頼関係,人間関係の占める割合が日本より小さい。
・日本は官僚主導国家であり,官僚の地位が高く,民間人である弁護士の地位は相対的に低い。しかし、米国では裁判官も弁護士の中から選ばれ,政治家も多くが弁護士資格を持っており,弁護士の社会的地位が高い。
・米国では,弁護士は社会的地位が高くのみならず,収入が多く、富裕層の代表である。日本で富裕層と言えば経営者と医師であり,弁護士はイメージと異なり労務の割に収入が少ないとされる(「日本のお金持ち研究」など実証研究がある。さらに,近時の国税庁統計では弁護士の窮乏が統計上明らかになっている)。米国で富裕層と言えば,経営者と弁護士であり,医師はその次である)
・連邦国家であり,州ごとの法律・裁判所があり、差異が大きい。
・日本では税理士,弁理士,司法書士,行政書士といった弁護士以外の隣接資格があるが,米国はこれら隣接資格がなく,弁護士1本である
・弁護士の人数が多く,競争が激しい。法律事務所の大規模化,専門化が日本より進んでいる。
日米の差異から,米国の法律事務所の視察が,そのまま日本に持ち込めるものではないことは当然であり,彼我の差異を充分に認識する必要がある。
他方,全く異なる文化を有する他国の状況に触れることで,新しい経営イメージやアイデアを持つことが出来ることもありうる。
士業で最大規模の佐藤グループの佐藤代表は海外視察の重要性を強調する。海外視察で受けたイメージが日本での法律事務所の経営や弁護士業務に新しい変革をもたらす可能性は充分にあると思います。