デリバティブ販売で北陸銀行に改善命令,取引先の書類を偽造
北陸銀行は平成24年12月7日,デリバティブ販売等に関する業務の適切性確保のため,法令遵守(コンプライアンス)態勢の強化等を求める業務改善命令を金融庁から受けました(銀行法26条1項に基づく行政処分)。
上記によると,北陸銀行がデリバティブ商品に関して作成するヒアリングシート等について,当初の目的に反し,多くの店舗で,多くの行員が,長期間にわたり,行内規則を逸脱した事務取扱を行っているとの指摘されています。
また,親会社サイトを見ると,取引先とのデリバティブ訴訟で信憑性を指摘された書類(北陸銀行所定のヒアリングシート)について,既に取り受けていた他の書類の社名ゴム印部分のコピーを切り貼りして作成し(=有印私文書偽造),裁判所に提出した(=同行使)ことが判明,別件でも同様の扱いが発覚した,という事実関係に基づく処分であり,銀行員がデリバティブ紛争,訴訟において,重大な刑事犯罪行為を犯したようです。
日本経済新聞も報じているほか,北陸銀行のホームページにも詳細が掲載されています。
→ 金融庁、北陸銀に業務改善命令 為替デリバティブ販売で不適切処理(日本経済新聞)
→ 北陸銀行に対する法令等遵守態勢等の充実・強化に関する業務改善命令について(ほくほくフィナンシャルのニュースリリース)
改善命令の内容ですが,
・デリバティブを初めとする金融商品の販売等にかかる業務運営の適切性を確保するため,下記5つの観点から,経営管理態勢,内部管理態勢,法令順守態勢の充実強化を図る。
1)法令等遵守態勢の強化に向けた経営姿勢の明確化,役職員の責任の所在の明確化
2)全行的な法令等遵守意識の向上
3)法令諸規則に則った適正な業務運営の確保を踏まえた業務推進態勢の構築
4)営業店及び本部関係部署における相互牽制機能の充実・強化
5)内部監査機能の充実・強化
・改善計画提出
・進捗,実施,改善状況の報告
・持ち株会社とも連携した点検,改善
他の銀行にも共通の問題点
デリバティブ紛争を担当していると,銀行提出書類が,明らかに虚偽であり偽造だと感じる例を,多くのケースで見受けます。あるメガバンクのある書類は,多くの中小企業が「見たこともない」という書類です。そのメガバンクの内部基準が厳格化された際に,新たに必要とされ,企業の外貨実需を記載する内容の書類です。また,他にも偽造ないし内容虚偽ではないか,と強く疑われる例も少なからず見受けます。
現在,問題となっている為替デリバティブ損失,デリバティブ倒産の問題については,金融庁はADRでの処理を勧める,といった程度の,いわば非当事者的,部外者的な立場でなく,金融再生プログラム,収益改善命令などを出して銀行のデリバティブ販売強化の端緒を作り,監督責任ある当事者として,今回の北陸銀行に対する行政処分のような積極的な関与が期待されるところだと感じます。
北陸銀行固有の問題
為替デリバティブを扱う弁護士や,地元関係者からも,北陸銀行のデリバティブ販売に対する批判の声は以前から何度も耳にしていました。デリバティブ損失・同倒産問題に関して,金融庁も重い腰を漸く上げ始めたようです。
なお,北陸銀行は地銀の中でも為替デリバティブ損失トラブルの件数が特に多いため,デリバティブ問題に積極的に取り組む弁護士法人の中には,北陸銀行対策を主たる目的として金沢支部を開設したところもあります(北陸銀行本店は富山ですが,高裁所在地が金沢であるため金沢への支店出店となっているものです)。