過払金返還請求訴訟の動向と論点(判タ1338号15頁)
判例タイムズ1338号(2011.3.1号)の15頁以下に、東京地方裁判所の4名の裁判官による「過払金返還請求訴訟における実務的問題」の論稿が掲載されています。
その冒頭で、平成19年以降、東京地裁でも激増を続けた過払金返還請求訴訟の件数(※)が、秋以降、若干ながら減少傾向に転じたことが伝えられえいます。
※論稿によれば、東京地裁における新受事件数は、平成19年=約80%増、20年=約33%増、21年約60%増で、平成22年夏まで著しく増加を続け、民事通常事件の新受件数の半数に迫る勢いだった、とのことです。
これは、私たちの事務所での実感とも合致するものです。
すなわち、
1 平成18年、19年の最高裁判決により、過払い請求自体が激増
2 平成20年後半から、訴訟をしないと満額支払いをしない貸金業者が増えたため、平成22年には過払い請求のうち、訴訟となる割合が激増
3 貸金業者の経営悪化や武富士破綻により、訴訟前和解の比率が回復
(過払い請求自体は、一旦落ち着きを見せたものの、武富士破綻で増加)
なお、判タ1306号5頁以下の特集で取り上げられなかった論点についても論じられています。
今回、判タ1338号15頁以下で取り上げられている論点は、
1 悪意の受益者
2 相殺
3 以前の和解・調停・17条決定の清算条項等の効力
4 営業譲渡、債権譲渡等と過払金返還債務の承継
5 冒頭ゼロ計算・推定計算
6 移送
過払金返還請求を扱う専門家には、判タ1306号と合わせて参照されることをお薦めします。