米国法律事務所と弁護士会(ABA)総会の視察旅行 2013 (8)
2013年、米国法曹協会の年次総会(ABA Annual meeting)参加の続きです。
3 アメリカ最高裁判決レビュー
今回の参加セッションの中で、最も内容が濃く、充実していました。鈴木淳司弁護士の同時通訳(・・・通訳というよりは、要約と解説)は、要点を得て、非常に分かりやすく、英語と半々で聞きながら、iPADで関連サイトを調査・参照し、とても勉強になりました。
上記写真の左下の女性は、有名人のリンダ・グリーンハウス女史です。
→ ウィキペディア
1978年から2008年の30年間もの長期にわたり、ニューヨーク・タイムズ紙で最高裁の法廷レポートを書き続け、98年にはピューリッツァー賞を受賞した方です。現在はエール大学法科大学院に複数の肩書を持って在籍しています。
他の3名は、上訴裁判を専門的に取り扱う著名弁護士です。
上記写真の左3名が精鋭弁護士,右端がグリーンハウス女史です。
下の写真のように参加人数が多く、人気のセッションでした。
今回、いくつもの最高裁判決が取り上げられ、議論されました。全部の紹介は出来ませんが、いくつか紹介します。
日本と異なる他民族国家であるアメリカならではの、人種や平等に関係するものが多かったように思います。
A カリフォルニア州の同性婚についての最高裁判決
2013年6月26日、米連邦最高裁は、(1)「結婚」を男女間に限ると規定した連邦法「結婚防衛法(DOMA)」を、違憲とするとともに、(2)同性婚を禁じたカリフォルニア州の法律が違憲だとする判決の結論を結果的に認めた。
(2)は正確には判決を支持したのではなく、原告(プロポジション8という同性婚を禁止する規定の支持者)に原告適格を認めず、判断を回避した。
→ ウィキペディア「同性婚」の「アメリカ合衆国」「カリフォルニア州」部分
→ 産経記事
原告適格で切ってしまい積極的な判断が回避された点について、「州法を誠実に執行する義務」という観点からは、そのような判断方法で良いのか、といった議論がされました。
(1)は連邦法での同性婚禁止が違憲とされたもので、各州やカリフォルニア州で州がどう判断するかについては、必ずしも決定されたものではありません。しかし、本セッションの3日後の2013.8.14、カリフォルニア州の最高裁は同性婚禁止を拒む(同性婚を認める)最終決定を全員一致で下しています。
→ Calif. court gives final OK to same-sex marriage の記事
B テキサス大学入試のアファーマティブ・アクションに関するフィッシャー事件
白人女性のフィッシャーさんが、自分が大学に入れなかったのは、平等原則に違反するアファーマティブ・アクションにより少数民族が優遇された結果だ、として訴訟を起こした事件です。最高裁は,より厳格な違憲審査基準で審査をするよう求めて、連邦控訴裁判所に差し戻しました。
現地の鈴木淳司弁護士から教わったことですが、米国では私立学校の学費が日本の比でなく高額であり、このため、良い公立学校がある地域では、ない地域と比較して、地価がずっと高いそうです。地価が高くても、私学に通わせるのに年3百万円、4百万円かかることを考えると、結局安くつく、ということがあるようです。
テキサス大学は公立であるため、原告のフィッシャーさんも訴訟をしてでも入学資格を争う、といった事件になる、という社会的背景について解説をいただきました。